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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
6. 奴隷商ターゴとの邂逅(5)
いくらかじれったく感じながらも、少し辛抱して、さっき言ったことを繰り返しました。わかりやすいだろうと、はっきり、ゆっくり、話しました。
男たちが掴んでいるわたしの手首を離して欲しいわ。
ターゴに話し続け、わたしが陥っている窮地と要求を説明しようとしましたが、ターゴは無愛想でじれったげに何か言うだけでした。
怒りにカッとしました。
この男はわたしの話を聞く気がないんだわ。
手首を引きましたが、二人の男は離してくれませんでした。
それからターゴはわたしに話し始めましたが、何ひとつ理解できませんでした。ターゴは使用人に話すように鋭く話しました。このことにイラっとしました。
「言っていることがわからないわ」
わたしは冷ややかに言いました。
ターゴはもどかしげに考え直しているようでした。わたしの声のトーンにはっとしたらしく、わたしを注意深く見つめ、わたしを誤解していると気付いたようでした。わたしに近づいてきて、声色は油っぽくご機嫌を取りのものでした。この小さな勝利に、わたしは気が晴れました。ターゴは今や優しくなり、へつらっているようでした。
エリノア・ブリントンに礼儀正しく遇すれば良いのよ!
でももちろんまだ、彼が言っていることはわかりません。
けれども、何かターゴの言葉には良く知っている何かがありました。それが何なのかはわかりません。
ターゴは、わたしが理解していないことを信じようとしない様子です。
ついにはとてもゆっくり、一言一言、とてもはっきりとターゴは話し続けていました。当然、努力は少しも報われず、わたしは一言も理解できません。何らかの理由で、ターゴを苛立たせたようでしたし、わたしも同様に苛立ちが募ってきました。ターゴは相手がネイティブであろうがなかろうが、誰でも彼の奇妙な言語を理解できるものと、あたかも思っているようです。なんと単純で偏狭な男なんでしょう。
英語ですらありません。
ターゴはわたしとの意思の疎通を図りましたが、無駄でした。
ある時点で部下の一人の方を向いて、質問をしたようでした。その男は一言答え、どうやら否定のようでした。
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