2010/11/07

ゴルの虜囚 82 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(18)

 その夜、川岸で早めに休息を取りました。夕方には衛兵の監視の下、いろいろな仕事をこなしました。ボスクの世話をして、荷車を掃除し、水を汲んで薪を集めました。料理をする者もいました。ユートとわたしはのどで一緒に邪魔にならないくらいに結ばれて、他の娘たち同様カミスクを着て、衛兵に監視されながらバケツを二つ持ってベリーを摘みに行きました。ベリーは多くなくて、バケツいっぱいにするのは容易ではありません。ユートのバケツからくすねて、自分のを先にいっぱいにしました。わたしたちがベリーを食べるとは思われていなかったし、ユートもしなかったと思いますが、わたしは衛兵が見ていないときに口の中に滑り込ませていました。果汁は注意深く口の中に抑えていましたから、唇にもあごにも証拠はありません。ユートは扱いやすい、とってもちっぽけなおバカさん。

 わたしたちがキャンプに戻ったときには、暗くなり始めていました。荷車の近くで、石を積み上げて小さな暖かい火がおこっているのを見てぎょっとしました。火から二つの焼き鏝の柄が出ていました。

 食事が終わると、荷車のそばに座る許可が出ました。わたしたちはカミスクを着ています。わたしたちを拘束しているのは一本の紐で、だいたい1ヤード間隔で縛られていました。それぞれの左足首が結ばれています。

 ある理由から、娘たちはあまりしゃべりませんでした。

 突然衛兵たちが飛び起きて、槍を掴みました。

 暗がりから二人の男の兵士が現れました。兵士の間には、顔をあらわにした女がよろめいていました。まばゆく輝くローブから出た腕は、幅の広い皮の紐で、体の脇に縛られていました。その女がターゴの足元に投げ出されました。わたしと他の娘たちが周りに押しかけると、衛兵たちがやりで押し返しました。その女はもがいていましたが、立ち上がらせてはもらえませんでした。目が険しくなり、いやいやと首を振っています。ターゴは革のベルトのポーチから一枚一枚、金貨45枚を二人の男に手渡しました。奴隷娘たちはどよめきました。途方もない金額です。ろくに品定めもしていないのに!わたしたちは、彼女のことは前もって契約がなされていたことを悟りました。ターゴから金貨を受け取った二人の男は闇に消えました。

 「金で動く人間に護衛を任せたのはバカだったな」 と、ターゴが言いました。

 「助けて!」 と女が叫びました。

 この女が誰なのかわかりました。あの一団の女だ!

 快感。

 「お願い!」 と女が泣きました。私も認める美しさです。

 「君には崇拝者がいてね」 と、ターゴが言いました。「テュロスのさる軍司令官だ。去年の秋にリディウスで君を見かけたんだよ。アルで内密に君を買って、テュロスにある快楽の庭へと連れて行くんだ。金貨100枚を払ってくれる」

 奴隷娘の何人かは息を飲みました。

 「誰ですか?」 捕らわれた女は哀しげに聞きました。

 「そのお方に買われればわかることだ」 ターゴは言いました。「好奇心はカジュラにふさわしくない。それを理由にぶたれることもある」

 地球で、あの背の高い男がこの言葉をわたしに言ったことを思い出しました。ゴルの格言だとわかりました。

 女は取り乱して首を振りました。

 「考えてみろ!」とターゴが責めたてました。「誰かを邪険にしたことは?誰かを軽んじたことは?」

 女は怯えているようでした。

 「脱がせろ」

 「いや!やめて!」

 彼女の体から紐が解かれ、服を切り取られました。

 彼女は荷車の大きな後輪にきつく縛られ、特に左の太ももはさまざまな皮の紐や縛り革紐で縛り付けられました。

 奴隷娘に押される焼印はさまざまです。最も一般的な焼印を入れる場所は左の太ももで、腰の下の高い位置です。わたしについている焼印もそこです。珍しい点や代わったところはありません。一般的なしるしで、普通の場所です。特別なところはありません。わたしは地球のエレノア・ブリントンなのに、他の奴隷娘のようにしるしを付けられました。腹立たしいことですが、男たちからすれば、基本的に他の娘たちと、他の奴隷たちと違わないんじゃないかと思いました。

 わたしは彼女に焼印が押されるのを見ていました。

 彼女は恐ろしげに叫び声を上げ、のけぞっていました。それから車輪の枠に頬を置き、すすり泣いていました。

 わたしたち奴隷娘は彼女の周りに押し寄せました。

 頭を車輪の枠に降ろしています。

 「顔をお上げなさい、お嬢さん」 彼女に言いました。

 彼女は顔を上げ、うつろな目でわたしを見つめました。この女は裸で、わたしはカミスクを着ている!わたしは烈火のごとく怒りに任せて彼女の顔をぶちました。「奴隷!」 わたしは叫びました。「奴隷!」 またぶちました。衛兵に引き離されました。ユートはその娘のところへ行き、肩を抱いて慰めました。すごく腹が立つ。

 「荷車に入れ」 ターゴが声を張り上げました。

 「荷車に入れ!」 衛兵たちが繰り返します。

 縛り紐がわたしたちの足首から外され、すぐにまた荷車に鎖でつながれました。新入りはわたしたちの荷車の前のほうに乗せられました。

 すぐに、三つの月明かりを頼りに衛兵たちがボスクをつなぎ、わたしたちはまた草原をゆっくりと進んでいました。

 ターゴはこの場に長くとどまるつもりはありませんでした。

 「明日ローラに着くぞ」

 と言うターゴの声が聞こえました。




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訳者の言い訳と解説

 第7章終了です。 

この章は惑星ゴルの都市の位置関係や、奴隷についてのディテールが中心でしたね。


 一章翻訳終わったらご褒美買って良いことにしたんだった。

誰かプレゼントしてくれても良いんだよ。


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ゴルの虜囚 81 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(17)


  それにしてもわたしは自分が平凡だとは思いません。地球では気絶しそうなほどきれいだと思われていました。

 それにゴルにおいてさえ、男の奴隷たるにふさわしいほどの魅力があるに決まっています。

 男の奴隷という考えは、わたしの心をかき乱しもし、気に入りもしました。わたしがその気になればケダモノに仕えることだってできます。地球のみんながわたしを見たら、エレノア・ブリントンがそんな風に所有されて、ご主人様を喜ばせようと励んでいるなんて、さぞかし笑えるだろうと思いました。

 でもわたしは女性に仕える給仕奴隷の務めのことも、もちろん何もわかっていませんでした。仕事は難しく、手間がかかり、多岐にわたります。優良な女性用の給仕奴隷は値がはります。ユートから聞いたところによると、難問のひとつは、上層階級の女性は、満足いく者を見つけている場合は別として、そのような奴隷に路地を這い回らせ、男の奴隷と内密に連絡を取らされることです。

 「野蛮人ね。ずいぶんおもしろいわ」 と、女が微笑みました。

 「草原で拾ったんです」 ターゴが言いました。ターゴは鎖につながれたわたしの存在が、彼の鑑定眼のなさの証拠と受け取られるのではないかと案じていました。タダで手に入れたのであり、こんな下級の娘を買ったのではないと、女性の疑念を晴らしたかったのです。

 わたしは女性の目を見つめました。彼女はベールの上から、好奇の目であまりにもじっとわたしを見つめています。美人みたい。なんて可憐で洗練されているの!わたしは目を合わせていることが出来ませんでした。

 「頭が高いわ、お嬢さん」 冷たい声ではありませんでした。

 喜んでまたすばやく地面に頭をつけました。

 自分の振る舞いや感情に荒れ狂いましたが、どうすることも出来ませんでした。

 彼女はとても素敵でした。わたしには何の価値もありません。自由の女の前にひざまずき、草の上に頭を付いている、他の女たちもそうです。わたし同様に単なる奴隷で、服を脱がされ、足首を鎖につながれ、のどを革でつながれ、焼印を押され、自由市民の前で何者でもありません。自分は奴隷娘だと嘆きました。

 ボスクの鈴の音と車輪のきしる音がしました。ターゴが深くお辞儀をしながら後ろへ下がり、荷車はゆっくりと通り過ぎてゆきました。脇を固めている衛兵も渡した力1ヤードか2ヤード以内のところを通過してゆきました。

 荷車と随行員が通り過ぎてゆくと、ターゴは起き上がりました。ターゴの顔は妙な表情を浮かべていました。

 なにかに喜んでいるようでした。

 「荷車に入れ」 と、ターゴが言いました。

 「荷車に入れ!」 と、衛兵たちが叫びました。

 「あの人は誰だったの?」 と、白髪交じりの片目の衛兵に尋ねました。

 「リディウスのレディ・リーナ、建築士階級だ」

 わたしは他の娘たちと荷車に鎖でつながれ、またゴルの草原を抜けてローラへ向け、ゆっくりと移動しました。

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ゴルの虜囚 80 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(16)


 「顔をお上げなさい、お嬢さん」 女性の声がしました。

 わたしは顔を上げました。

 彼女はわたしより年上ではないはずですが、わたしを子ども扱いしました。

 衛兵がまた足でわたしをこづきました。

 「買ってください、ご主人様」

 わたしは口ごもりながら言いました。

 この女がわたしを買うんじゃないかと恐ろしくなりました。女に買われたくなんかない! でもこの考えにはっとしました。女に所有されるほうが良いはずです。召使とかで、長い髪をとかしたり、服を着せて飾り立てたり、お化粧品を取ってきたり、ことづけをしたりお使いに走ったり。全部やりたくないことだってわかってる!女に所有されるなんていや! でもどうして?そうじゃなければ?顔が良くて男らしくて力強くて、女から残らずすべてを奪うゴルのケダモノに怯える奴隷のほうが良いって、わたしが本気で望む?そんなわけない!

 でもわたし自身も驚きましたが、女の奴隷よりは男の奴隷のほうが良いという考えが心に浮かびました。

 わたしはなんて邪悪なんだろうと思いました。

 顔が良くて、男らしくて、威圧的で、支配的なケダモノに共鳴し始めてるはずがない!わたしが無意味な奴隷のはずない!違う!自分に言い聞かせました。違う、絶対にそんなことない! でもわたしは既にわかりかけていました。奴隷娘は男をどう見ているか。男の力と、女の無力さ、男の容赦ない強さと女のどうしようもない美しさ、所有することと所有されること、それら相補性にいかに反応するか。女は男の所有物であることを知っているのです。支配する者と、服従する者。支配は男の物、服従は女の物。この状況で女は人工的な因習ではなく自然の法則に従っているのです。奴隷娘にとって男は興味の対象にとどまらず、たまらなく魅力的なのです。男の足元で頭を下げ、支配を受ける。

 でも、わたしが好もうが好むまいが、自分はそういう男の奴隷にふさわしくうってつけだと気付いていました。

 このことをののしっても、事実だと気付いていました。

 そして衛兵たちにも、わたしは男に買われてゆくのだと信じ込まされていました。

 「どうしてですか、ご主人様」 わたしは聞きました。

 「おまえはなんとも平凡だけど、そんな気にさせるんだ。お前がもっと奴隷の身分に目覚めたら本当にわかる。お前は立派にお仕えして、毛皮でのたうってあえぐ」

 「ご主人様ったら!」 わたしは抗議しました。

 一番魅力的な女は、必ずしも絶世の美女ではないとユートが言っていました。そういうことは地球であっても同じで、先刻承知のことです。好ましさと言うのはさまざまな要因、さまざまなとらえにくいものが相関しているのです。女の中には奴隷が住み、その奴隷は解き放たれがっていると、ゴルの人たちの多くが信じています。奴隷商人が獲物の前に立ち自由な女の服を脱がせると、解放の決意が生まれるのだと言われています。腕を取り目を見ろと命令すると、女に覚悟が出来ていればすぐに彼女の目は恐怖の色と涙でいっぱいになり、首輪を待ち焦がれ請い求めるのだと。少なくとも、情が深く、献身的で、ご主人様が少し触れれば敏感に反応する、もっとも魅力的な奴隷のうちの何人かは、快楽の庭か籠に銀の鎖で留めておく観賞用にはいないことは明白です。そこそこの資産しか持たぬ怒れる若者は、失望し挫折感を味わいながら、市場から鎖を引いて家に帰るのです。自分の買える一番良いものであっても、二流の品です。しかし家を案内し、縛って、ここの奴隷だと知らしめる慣習の鞭打ちの儀式が終わる頃には、男は気が付くのです。離してやると、奴隷娘は腹ばいになってやってきて、足を包み、男の脚へ口づけする。そして娘は男の脚をおずおずと抱きしめ、涙のあふれる目で男の目を見上げる。足元に金には変えられない、自分の財産、説明のつかないほどの勝利者たらしめた市場でのめぐり合わせのもの。足元にひざまずく奴隷は男の物になり、いつの日か愛する奴隷にさえなるのです。



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訳者の言い訳と解説 

 「快楽の庭」というのは、ハーレムみたいなもの。

お金持ちとか権力者が、奴隷をはべらせておく場所。

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ゴルの虜囚 79 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(15)


 あるときインジと話していて、ユートはいつも文法的間違いをしているのに気がつきました。

 「そうね。あの人は革職人だから」と、インジは言いました。 

  自分はユートより勝っていると思いました。

わたしはそんな間違いは犯しません。わたしはエレノア・ブリントンなんだから。

 「わたしは上層階級のゴル語を話すの」と、わたしはインジに言いました。

 「でもあなたは野蛮人でしょ」

 一瞬インジが憎たらしいと思いました。

 インジは書記だけれど、鎖につながれた奴隷娘のままで、ご主人様に従わなければならない。その頃にはわたし、エレノア・ブリントンは安全な地球の、居心地の良いペントハウスにまたいるのだと自分に言い聞かせました。ユートも奴隷のままよ!おばかさんで間抜けなユートは、自分の国の言葉さえちゃんと話せないもの! かわいいからって、男のおもちゃになるくらいしか意味がないじゃない。ユートは生まれついての奴隷よ!鎖につながれるのがお似合いね。インジだって傲慢すぎる!あの人たちはゴルにいて支配される身分だけれど、わたしは、エレノア・ブリントンはお金持ちで賢くて、安全に守られて、遠い世界のペントハウスで笑っているの。良い気味!

 「エリ=ノ=アどうして笑うの?」と、ユートが見上げてたずねてきました。

 「エレノアだってば」と正しました。

 「エレノア」と、ユートが微笑みます。

 「なんでもないの」

 衛兵の一人が外で叫んでいるのが聞こえました。遠くでボスクのベルが鳴っているのも。

 「高貴な方のご一行様だ!」 衛兵の一人が叫びました。

 「従者を従えた自由な女だ!」 他の衛兵が叫びました。

 ターゴが「奴隷たち、表に出ろ!」と声を張り上げています。 

 そのときまで、ゴルの自由な女を見たことがなかったので、わくわくしました。

衛兵があわただしく足首をつなぐ棒の一方を外しました。わたしたちは一人ずつ棒に沿って、出口の開いた荷車の後ろに歩きました。当然わたしの足首も、輪が二つ付いた鎖で他の娘たちとつながれたままです。

荷車の外に出ると、それぞれののどを一列に、紐で数珠繋ぎにされました。首を伸ばして見ると、荷車のわきに一列に並ばされていました。もう一台の荷車の娘たちはわたしたちより先で、ラナもそっちにいました。彼女たちは既に草の上にひざまずいて見ていました。

 巨大できれいに毛づくろいされた四頭のボスクに引かれている、大きくて平らな荷車が見えました。

 荷車の上には、フリンジの付いたシルクの天蓋の中で、立派な椅子に女が一人座っていました。

 多分兵士が40人、槍を持って片側20人ずつで荷車の脇を固めていました。

 ボスクの引き具の鈴が鳴るのが、今ははっきり聞こえます。一団が近づいてきました。ターゴは外に出ていて、青と黄色のローブをひるがえし、途中まで出迎えていました。

 「ひざまずけ」

 衛兵が言いました。

 わたしたちは、展示の鎖につながれてひざまずきました。

 ゴルの奴隷は、自由な男や自由な女の前では許しがない限り常にひざまずきます。衛兵に話しかけられるときはもちろん、わたしのご主人様のターゴが近づいてくるときもひざまずくことを教えられました。ちなみに、ゴルの奴隷は自由な男を「マスター」、自由な女を「ミストレス」と呼ばなくてはいけません。

 わたしは平らな荷車が近づいてくるのを見ていました。

 女は椅子に堂々と座り、まばゆく輝く色とりどりのシルクに包まれていました。彼女がまとっているものは、わたしたち三、四人まとめた以上の価値ではないでしょうか。そしてベールをかぶっていました。

 「恐れ多くも自由の女を見たいのか?」 衛兵が尋ねました。

 恐れ多いどころか、ぜひそうしたいと思いました。でも荷車が近づいてきたので、脚でこづかれて、他の娘たちと同様に草の上に頭をつけました。

 一団の荷車はわたしたちから数フィート向こうに止まりました。

 顔を上げる勇気はありませんでした。

 不意に自分は自由な女とは違うことを理解しました。ゴルの草原でひざまずき、生まれて初めて、雷に打たれるようにショッキングな社会制度がわかりました。突然理解したのです。わたしの地位や富がオーラを創り、劣った人たちにわたしを尊敬させ、敬わせ、機嫌を取らせ、それに失敗するのを恐れさせるのだと。わたしはなんと自然に他の人と差別化を図っていたのでしょう。わたしのほうがずっと良い!優れている!ただ、今は自分の世界にいない。



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訳者の言い訳と解説

 ついこの間、寂しくて寂しくてユートと友達になりたいとか言ってた気がするんですけど、

相変わらずエレノアさんは嫌な女全開です(笑)


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ゴルの虜囚 78 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン


7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(14)

 わたしたちは二度、ボスクを牧畜する断崖の村に立ち寄りました。わたしはこの滞在は歓迎でした。まだぬくもりのある絞りたてのボスクのミルクを飲めたし、草葺だけれど屋根のあるところで夜を過ごせます。このような村にある、夜にわたしたちがつながれる小屋には、いつでもきれいな藁が敷かれてています。すっきりとした、お日様のにおいがします。荷車の硬い板のあとでは、ここに横になるのはとっても素敵です。

 ユートとインジ、特にユートは忍耐強い、根気良い教師でした。一日に何時間もわたしにゴル語を教え、当然わたしはゴル語漬けです。わたしはすぐに、考えなくともにゴル語を話せるようになりました。言葉を自由に使いこなせない子供が学ぶように、この言語を習いました。 ユートもインジも英語を知りませんから、変換の理論的体系や、言語学的な同一性を示すことは、したくても出来ません。二人は英語を知らないのだから、道具のごとく実用的かつ具体的、花や雲のごとく表現豊かで美しい、生きた言葉を教えるほかありません。わたしがゴル語で考えるようになるのに、長くはかかりませんでした。レッスンを始めてから十日ほど後に見た夢は、知性的なゴル人へ、同じ言語で考えずに受け答えすること。飴を盗みラナのせいにして、ラナがぶたれる夢も見ました。面白い夢を見ていたのに、ターゴが鞭を手に揺らしながらこっちへ来るような気がしました。冷や汗をかいて目を覚ますと、わたしは荷車の中で無事に鎖につながれ、カンバス地の上でした。外は雨で、赤い縞模様の角ばった屋根を打つ音が聞こえました。荷車の中の他の娘たちの息づかいが聞こえました。わたしはまた体の下の幌布の上に寝そべると、鎖がかちゃりと音を立てました。雨の音を聞きながら、また眠りに落ちてゆきました。

 最初は文法は完璧ではありませんでしたが、インジが上達を手助けしてくれました。しばらくすると、娘たちや衛兵の訛りで、地方の違いさえも見分けられるようになりました。ボキャブラリーは徐々に広がり、たった数日間で、ユートとインジの徹底的な指導の下、ゴル人と会話できるまでになりました。もちろん、わたしがこれほど熱心に言葉を習うのには特別な理由があります。わたしを地球に返してくれる人とコンタクトを取りたいからでした。地球にある資産で、故郷の星に戻る早い渡航証が買えるに違いないと思いました。

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ゴルの虜囚 77 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(13)


 この世界の男の性質について、恐らく十分に説明していなかったと思います。地球の男とは全然違います。概して体が大きく、たくましく、雄々しく、自信に満ち、頑固で、力強い男である場合が多いです。さらに大きな違いは、大きさやたくましさではなく、気質や心理の面です。異なった文化変容を遂げています。たとえば、女を奴隷にするのを認め、受け入れ、良しとする世界に生きています。美しい娘が奴隷となり奴隷の衣服をまとうことにより、その肢体や美しさを十分にあらわにし、首輪をはめられているのにも見慣れています。奴隷娘を見たら腕に抱きたいと考えるのは言うまでもなく、そのときほど男らしさに火がつくものはありません。この世界では、男がそれが当然だと全然考えもせずに思っているのは、驚くべきことではありません。たいてい、女を見たら自由な女であっても、奴隷としての価値があるかどうか、<オークションのストック>として価値かあるかどうか、カウチの脚の奴隷のリングの装飾品としてか、のたうつ<首輪の付いた肉体>として見るのです。ゴルの男が支配することの点から考えるのは、驚くことではありません。

 それが彼らの文化です。男らしさを放棄することは絶対にしてきませんでした。自然な生物学上の支配力を手放すことはありませんでした。このゴルの文化は、本質を否定せず、受け入れ、喝采し、楽しみ、高めていきます。

 男の前で鎖につながれひざまずいていると、わたしは商品だ、わたし、エレノア・ブリントンは売りに出されている。わたしが買われるかもしれない。何度も何度もこの考えに打ちのめされました。

 それにゴルの男だから、わたしを、エレノア・ブリントンを、経歴や育ち、教養や素養、富や地位と名誉で見てはくれません。首輪や慰みものとして見るんだ!

 そしてもしこの男がわたしを買ったら、この男に仕えなければならないんだ。そして完全になるんだ、<彼の奴隷>に。

 恐ろしくて、気持ちが沈み、血の気が失せました。立ち上がって泣き叫び、鎖を荒々しく引っ張り走りたい気持ちでした。そうしているうち、彼はもはやわたしの前にはおらず、次の女を検分していたので、言葉も出ないほど安心しました。「買ってください、ご主人様」と言っているのが聞こえました。わたしは体が震えてきました。男は鎖の九番目につながれた、別の娘の前に立ち止まっていました。 男は鎖を横切ると、わたしの前に戻ってきました。まるで体が木になったようで、目を合わせることも出来ませんでした。恐ろしくて、「買ってください、ご主人様」と繰り返すことも出来ません。男は九番目の娘の前へ行き、その娘を買いました。ターゴはその日の午後で二人売りました。お金が渡されて、九番目の娘が鎖から外されました。彼女は買い手の前でかかとにお尻を付けてひざまずき、頭を下げ、縛ってくれと言うように腕を伸ばして手首を交差させました。新しいご主人様への服従です。男は彼女に奴隷の手枷をつけて両手首を縛り、首に紐をつけ、その紐を荷車の脇に留めました。彼女はご主人様に手を触れたかったようですが、手でぴしゃりとはねのけられました。彼女はおどおどしながらも、嬉しそうです。彼女がご主人様に所有されるまでには長くかかりました。男の物になるのはどんな感じだろう。わたしは身震いしました。買われた娘は隊商が動くまで荷車の陰にひざまずいていました。それから立ち上がり、荷車の脇を引かれて歩いて行きました。彼女は一度振り返り、手枷をはめられた手を上げました。わたしたちは彼女に手を振りました。彼女は幸せそうでした。



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訳者の言い訳と解説


 以前、エリノアよりエレノアのほうが良いというアドバイスをいただいておりました。

修正するには既に翻訳が進みすぎていたので、諦めたのですけれど修正することにします。

カタカナのエリノアとエリ=ノ=アでは、ゴルなまりの雰囲気が出ないのが理由です。


 "かかとにお尻を付けてひざまずき、頭を下げ、縛ってくれと言うように腕を伸ばして手首を交差させました。"

このポーズは、ご主人様に服従を誓うポーズで、

submission(サブミッション)と呼ばれます。

現実のゴル系BDSMプレイでも使われる用語です。

試験に出ますから覚えてくださいね。

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ゴルの虜囚 76 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(12)


 ローリウス川の丘へ到着するには何日もかかりました。

 わたしたちは四つほどの隊商に出会い、その都度ターゴは展示の鎖を見せました。わたしは鎖の四番目です。ラナが売られれば良い、ユートとインジはそうならなければ良いと思っていました。

 隊商には奴隷娘がいて、ご主人様と一緒に見に来ることもしばしばありました。鎖につながれない自由、好きなだけ走ったり笑ったり歩いたりしている彼女たちが、どんなに羨ましかったか知れません。左肩で結んだ丈の短い奴隷のチュニックを着た彼女たちは、なんてきれいなんだろう。首輪をはめられ、ご主人様の腕に寄り添い、なんとすまして私たちを見ていることか。買ってもらえず裸で展示の鎖につながれて、草の上にひざまずくわたしたちを、どんなに蔑んでいることでしょう。

 不思議とわたしは、自分が売れる可能性を少しも考えていませんでした。でも一度、わたしが顔を上げてかわいらしく微笑み、「買ってください、ご主人様」と品定めされる奴隷娘のお決まりのフレーズを口にした後、心臓が止まりそうになりました。男が立ち止まったまま、まだわたしを見ていました。その男がわたしにいくらかの興味を持って見ているのだとわかり、恐ろしくなりました。

 その男の目も、表情も、神経の集中させ方も、観察の仕方も、専門家のごとくわたしを値踏みしていました。

 怖かったです。

 わたしは奴隷娘として見られている。

 実際、それがわたしだったし、今もそうなのだから。

 でもこの瞬間まで、奴隷のなんたるかを、完全にわかっていなかったと思います。

 もちろん、ターゴや衛兵たちから、奴隷娘として飼いならされてきました。

 当然、男たちが奴隷娘と自由な女を見る目はまったく別です。そのように育ってきたのです。

 ある男が、魅力的な自由な女を見初めたとしましょう。しかし概してその女性は近寄りがたく、むしろそっけなく、悩みの種です。でも奴隷娘を見れば、きっと手に入れられるとわかるのです。自分が工面できる適正な値段で、もしかしたらちょっと無理が必要だけれど、手に入れられそうに見えるでしょう。 そして男が喜ぶこと、その美しいすべてが男のものになるのです。仮に自分がその女の獲得に乗り出さず、自分ではない他の男が女を支配し喜びを得るならば、彼にとっても喜ばしいことです。

 この男の前にひざまずいているうちに、自分がこの人にどんな風に見えているかを突然理解しました。足元で鎖につながれ、か弱い、お金で買える奴隷。

 どんなに魅力的で、どんなに関心を引き、どんなにかぐわしく自分が見えているかと、恐ろしくなりました。

 そして今まで思いもしなかったある考えに襲われ、揺さぶられました。わたしは商品で、売られるかも知れなくて、犬や猫や豚のようにご主人様のものになるんだ。この人が望むすべてがこの人のものになるんだ。———<完全に>



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訳者の言い訳と解説

 後半の翻訳にちょっと自信がありません。

 自信満々、弱肉強食世界に生きる本物の男であるゴルの男が、

自由市民とは言えか弱い女に気後れして、

お金で買える奴隷娘なら手に入ると思うって、矛盾しちゃうよね。


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ゴルの虜囚 75 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(11)



 ブラシや櫛の入った箱が運ばれてきました。みんなはペアになり、相手の髪をとかし始めました。競ってラナの髪をとかす娘たちもいます。わたしも櫛を渡されました。
 おずおずとユートのところに行きました。目に涙が浮かんできます。ユートと同じ言葉を話すことすらできません。荷車の引き具を引くのを怠けて、自分の分を他の人にやらせようとしたことを、申し訳ないと伝えることが出来ませんでした。寂しくて、辛くてたまらないと伝えることさえも出来ませんでした。何よりも、友達になってほしいと伝えることが出来ませんでした。
 小川でユートはわたしを拒絶し、そっぽを向きました。
 ユートのところに行くと、ユートが振り向いてわたしを見ました。また顔をそむけられたらとおどおどしながら、もし構わなければ、もしそうしてユートを喜ばせられるならば、髪をくしけずることを許して欲しいと願っていることを、身振りで示しました。
 ユートが冷ややかにわたしを見ています。
 わたしはすすり泣いてユートの前にひざまずき、話しかけることも出来ずに頭を下げました。
 するとユートはひざをつき、わたしの顔を上げてくれました。ユートの目にも涙が浮かんでいました。
 「エリ=ノ=ア」と言ってキスしてくれました。
 わたしは涙を流し、ユートにキスをしました。
 ユートはひざをついたまま向きを変え、髪をすかせてくれました。
 終わるとユートが櫛を取り、わたしの髪をすきました。
 奴隷娘たちの中でわたしが好きなのはユートとインジの二人で、インジは書記でした。二人の名前はドイツ風です。二人ともわたしが単語をいくつか知るドイツ語は話せないし、わたしが流暢に話せるフランス語も話せません。完全にゴル人で、当然英語もわかりません。多くのゴルの名前は地球からのもののようです。
 早速ユートは、そしてインジまでゴル語をわたしに教え始めました。
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