<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(11)
ブラシや櫛の入った箱が運ばれてきました。みんなはペアになり、相手の髪をとかし始めました。競ってラナの髪をとかす娘たちもいます。わたしも櫛を渡されました。
おずおずとユートのところに行きました。目に涙が浮かんできます。ユートと同じ言葉を話すことすらできません。荷車の引き具を引くのを怠けて、自分の分を他の人にやらせようとしたことを、申し訳ないと伝えることが出来ませんでした。寂しくて、辛くてたまらないと伝えることさえも出来ませんでした。何よりも、友達になってほしいと伝えることが出来ませんでした。
小川でユートはわたしを拒絶し、そっぽを向きました。
ユートのところに行くと、ユートが振り向いてわたしを見ました。また顔をそむけられたらとおどおどしながら、もし構わなければ、もしそうしてユートを喜ばせられるならば、髪をくしけずることを許して欲しいと願っていることを、身振りで示しました。
ユートが冷ややかにわたしを見ています。
わたしはすすり泣いてユートの前にひざまずき、話しかけることも出来ずに頭を下げました。
するとユートはひざをつき、わたしの顔を上げてくれました。ユートの目にも涙が浮かんでいました。
「エリ=ノ=ア」と言ってキスしてくれました。
わたしは涙を流し、ユートにキスをしました。
ユートはひざをついたまま向きを変え、髪をすかせてくれました。
終わるとユートが櫛を取り、わたしの髪をすきました。
奴隷娘たちの中でわたしが好きなのはユートとインジの二人で、インジは書記でした。二人の名前はドイツ風です。二人ともわたしが単語をいくつか知るドイツ語は話せないし、わたしが流暢に話せるフランス語も話せません。完全にゴル人で、当然英語もわかりません。多くのゴルの名前は地球からのもののようです。
早速ユートは、そしてインジまでゴル語をわたしに教え始めました。
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