2010/11/07

ゴルの虜囚 76 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(12)


 ローリウス川の丘へ到着するには何日もかかりました。

 わたしたちは四つほどの隊商に出会い、その都度ターゴは展示の鎖を見せました。わたしは鎖の四番目です。ラナが売られれば良い、ユートとインジはそうならなければ良いと思っていました。

 隊商には奴隷娘がいて、ご主人様と一緒に見に来ることもしばしばありました。鎖につながれない自由、好きなだけ走ったり笑ったり歩いたりしている彼女たちが、どんなに羨ましかったか知れません。左肩で結んだ丈の短い奴隷のチュニックを着た彼女たちは、なんてきれいなんだろう。首輪をはめられ、ご主人様の腕に寄り添い、なんとすまして私たちを見ていることか。買ってもらえず裸で展示の鎖につながれて、草の上にひざまずくわたしたちを、どんなに蔑んでいることでしょう。

 不思議とわたしは、自分が売れる可能性を少しも考えていませんでした。でも一度、わたしが顔を上げてかわいらしく微笑み、「買ってください、ご主人様」と品定めされる奴隷娘のお決まりのフレーズを口にした後、心臓が止まりそうになりました。男が立ち止まったまま、まだわたしを見ていました。その男がわたしにいくらかの興味を持って見ているのだとわかり、恐ろしくなりました。

 その男の目も、表情も、神経の集中させ方も、観察の仕方も、専門家のごとくわたしを値踏みしていました。

 怖かったです。

 わたしは奴隷娘として見られている。

 実際、それがわたしだったし、今もそうなのだから。

 でもこの瞬間まで、奴隷のなんたるかを、完全にわかっていなかったと思います。

 もちろん、ターゴや衛兵たちから、奴隷娘として飼いならされてきました。

 当然、男たちが奴隷娘と自由な女を見る目はまったく別です。そのように育ってきたのです。

 ある男が、魅力的な自由な女を見初めたとしましょう。しかし概してその女性は近寄りがたく、むしろそっけなく、悩みの種です。でも奴隷娘を見れば、きっと手に入れられるとわかるのです。自分が工面できる適正な値段で、もしかしたらちょっと無理が必要だけれど、手に入れられそうに見えるでしょう。 そして男が喜ぶこと、その美しいすべてが男のものになるのです。仮に自分がその女の獲得に乗り出さず、自分ではない他の男が女を支配し喜びを得るならば、彼にとっても喜ばしいことです。

 この男の前にひざまずいているうちに、自分がこの人にどんな風に見えているかを突然理解しました。足元で鎖につながれ、か弱い、お金で買える奴隷。

 どんなに魅力的で、どんなに関心を引き、どんなにかぐわしく自分が見えているかと、恐ろしくなりました。

 そして今まで思いもしなかったある考えに襲われ、揺さぶられました。わたしは商品で、売られるかも知れなくて、犬や猫や豚のようにご主人様のものになるんだ。この人が望むすべてがこの人のものになるんだ。———<完全に>



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訳者の言い訳と解説

 後半の翻訳にちょっと自信がありません。

 自信満々、弱肉強食世界に生きる本物の男であるゴルの男が、

自由市民とは言えか弱い女に気後れして、

お金で買える奴隷娘なら手に入ると思うって、矛盾しちゃうよね。


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