ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(17)
それにしてもわたしは自分が平凡だとは思いません。地球では気絶しそうなほどきれいだと思われていました。
それにゴルにおいてさえ、男の奴隷たるにふさわしいほどの魅力があるに決まっています。
男の奴隷という考えは、わたしの心をかき乱しもし、気に入りもしました。わたしがその気になればケダモノに仕えることだってできます。地球のみんながわたしを見たら、エレノア・ブリントンがそんな風に所有されて、ご主人様を喜ばせようと励んでいるなんて、さぞかし笑えるだろうと思いました。
でもわたしは女性に仕える給仕奴隷の務めのことも、もちろん何もわかっていませんでした。仕事は難しく、手間がかかり、多岐にわたります。優良な女性用の給仕奴隷は値がはります。ユートから聞いたところによると、難問のひとつは、上層階級の女性は、満足いく者を見つけている場合は別として、そのような奴隷に路地を這い回らせ、男の奴隷と内密に連絡を取らされることです。
「野蛮人ね。ずいぶんおもしろいわ」 と、女が微笑みました。
「草原で拾ったんです」 ターゴが言いました。ターゴは鎖につながれたわたしの存在が、彼の鑑定眼のなさの証拠と受け取られるのではないかと案じていました。タダで手に入れたのであり、こんな下級の娘を買ったのではないと、女性の疑念を晴らしたかったのです。
わたしは女性の目を見つめました。彼女はベールの上から、好奇の目であまりにもじっとわたしを見つめています。美人みたい。なんて可憐で洗練されているの!わたしは目を合わせていることが出来ませんでした。
「頭が高いわ、お嬢さん」 冷たい声ではありませんでした。
喜んでまたすばやく地面に頭をつけました。
自分の振る舞いや感情に荒れ狂いましたが、どうすることも出来ませんでした。
彼女はとても素敵でした。わたしには何の価値もありません。自由の女の前にひざまずき、草の上に頭を付いている、他の女たちもそうです。わたし同様に単なる奴隷で、服を脱がされ、足首を鎖につながれ、のどを革でつながれ、焼印を押され、自由市民の前で何者でもありません。自分は奴隷娘だと嘆きました。
ボスクの鈴の音と車輪のきしる音がしました。ターゴが深くお辞儀をしながら後ろへ下がり、荷車はゆっくりと通り過ぎてゆきました。脇を固めている衛兵も渡した力1ヤードか2ヤード以内のところを通過してゆきました。
荷車と随行員が通り過ぎてゆくと、ターゴは起き上がりました。ターゴの顔は妙な表情を浮かべていました。
なにかに喜んでいるようでした。
「荷車に入れ」 と、ターゴが言いました。
「荷車に入れ!」 と、衛兵たちが叫びました。
「あの人は誰だったの?」 と、白髪交じりの片目の衛兵に尋ねました。
「リディウスのレディ・リーナ、建築士階級だ」
わたしは他の娘たちと荷車に鎖でつながれ、またゴルの草原を抜けてローラへ向け、ゆっくりと移動しました。
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