ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(18)
その夜、川岸で早めに休息を取りました。夕方には衛兵の監視の下、いろいろな仕事をこなしました。ボスクの世話をして、荷車を掃除し、水を汲んで薪を集めました。料理をする者もいました。ユートとわたしはのどで一緒に邪魔にならないくらいに結ばれて、他の娘たち同様カミスクを着て、衛兵に監視されながらバケツを二つ持ってベリーを摘みに行きました。ベリーは多くなくて、バケツいっぱいにするのは容易ではありません。ユートのバケツからくすねて、自分のを先にいっぱいにしました。わたしたちがベリーを食べるとは思われていなかったし、ユートもしなかったと思いますが、わたしは衛兵が見ていないときに口の中に滑り込ませていました。果汁は注意深く口の中に抑えていましたから、唇にもあごにも証拠はありません。ユートは扱いやすい、とってもちっぽけなおバカさん。
わたしたちがキャンプに戻ったときには、暗くなり始めていました。荷車の近くで、石を積み上げて小さな暖かい火がおこっているのを見てぎょっとしました。火から二つの焼き鏝の柄が出ていました。
食事が終わると、荷車のそばに座る許可が出ました。わたしたちはカミスクを着ています。わたしたちを拘束しているのは一本の紐で、だいたい1ヤード間隔で縛られていました。それぞれの左足首が結ばれています。
ある理由から、娘たちはあまりしゃべりませんでした。
突然衛兵たちが飛び起きて、槍を掴みました。
暗がりから二人の男の兵士が現れました。兵士の間には、顔をあらわにした女がよろめいていました。まばゆく輝くローブから出た腕は、幅の広い皮の紐で、体の脇に縛られていました。その女がターゴの足元に投げ出されました。わたしと他の娘たちが周りに押しかけると、衛兵たちがやりで押し返しました。その女はもがいていましたが、立ち上がらせてはもらえませんでした。目が険しくなり、いやいやと首を振っています。ターゴは革のベルトのポーチから一枚一枚、金貨45枚を二人の男に手渡しました。奴隷娘たちはどよめきました。途方もない金額です。ろくに品定めもしていないのに!わたしたちは、彼女のことは前もって契約がなされていたことを悟りました。ターゴから金貨を受け取った二人の男は闇に消えました。
「金で動く人間に護衛を任せたのはバカだったな」 と、ターゴが言いました。
「助けて!」 と女が叫びました。
この女が誰なのかわかりました。あの一団の女だ!
快感。
「お願い!」 と女が泣きました。私も認める美しさです。
「君には崇拝者がいてね」 と、ターゴが言いました。「テュロスのさる軍司令官だ。去年の秋にリディウスで君を見かけたんだよ。アルで内密に君を買って、テュロスにある快楽の庭へと連れて行くんだ。金貨100枚を払ってくれる」
奴隷娘の何人かは息を飲みました。
「誰ですか?」 捕らわれた女は哀しげに聞きました。
「そのお方に買われればわかることだ」 ターゴは言いました。「好奇心はカジュラにふさわしくない。それを理由にぶたれることもある」
地球で、あの背の高い男がこの言葉をわたしに言ったことを思い出しました。ゴルの格言だとわかりました。
女は取り乱して首を振りました。
「考えてみろ!」とターゴが責めたてました。「誰かを邪険にしたことは?誰かを軽んじたことは?」
女は怯えているようでした。
「脱がせろ」
「いや!やめて!」
彼女の体から紐が解かれ、服を切り取られました。
彼女は荷車の大きな後輪にきつく縛られ、特に左の太ももはさまざまな皮の紐や縛り革紐で縛り付けられました。
奴隷娘に押される焼印はさまざまです。最も一般的な焼印を入れる場所は左の太ももで、腰の下の高い位置です。わたしについている焼印もそこです。珍しい点や代わったところはありません。一般的なしるしで、普通の場所です。特別なところはありません。わたしは地球のエレノア・ブリントンなのに、他の奴隷娘のようにしるしを付けられました。腹立たしいことですが、男たちからすれば、基本的に他の娘たちと、他の奴隷たちと違わないんじゃないかと思いました。
わたしは彼女に焼印が押されるのを見ていました。
彼女は恐ろしげに叫び声を上げ、のけぞっていました。それから車輪の枠に頬を置き、すすり泣いていました。
わたしたち奴隷娘は彼女の周りに押し寄せました。
頭を車輪の枠に降ろしています。
「顔をお上げなさい、お嬢さん」 彼女に言いました。
彼女は顔を上げ、うつろな目でわたしを見つめました。この女は裸で、わたしはカミスクを着ている!わたしは烈火のごとく怒りに任せて彼女の顔をぶちました。「奴隷!」 わたしは叫びました。「奴隷!」 またぶちました。衛兵に引き離されました。ユートはその娘のところへ行き、肩を抱いて慰めました。すごく腹が立つ。
「荷車に入れ」 ターゴが声を張り上げました。
「荷車に入れ!」 衛兵たちが繰り返します。
縛り紐がわたしたちの足首から外され、すぐにまた荷車に鎖でつながれました。新入りはわたしたちの荷車の前のほうに乗せられました。
すぐに、三つの月明かりを頼りに衛兵たちがボスクをつなぎ、わたしたちはまた草原をゆっくりと進んでいました。
ターゴはこの場に長くとどまるつもりはありませんでした。
「明日ローラに着くぞ」
と言うターゴの声が聞こえました。
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訳者の言い訳と解説
第7章終了です。
この章は惑星ゴルの都市の位置関係や、奴隷についてのディテールが中心でしたね。
一章翻訳終わったらご褒美買って良いことにしたんだった。
誰かプレゼントしてくれても良いんだよ。
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