2011/02/06

ゴルの虜囚 83 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

8. ローラの北での出来事(1)

わたしたちがローリウス川の丘に着いたのは、翌朝の夜が明けてすぐでした。

霧の立ちこむ寒い日。焼印を押されたばかりの新入りの娘は、フードとさるぐつわをされ、体を縛られています。彼女以外は荷車に敷かれた幌布の間をうごめいていました。わたしの他に何人かが、四角く張られた荷車の横の幌を持ち上げて、朝霧のかかる外をのぞいていました。

魚と川のにおいがします。

霧の中に、あちらこちらへ動き回る男たちや、背の低い木造の小屋が見えました。既に最初の漁から戻る、漁師に違いない人たち。彼らは夜にたいまつと三叉のやすを使い、川面の魚を捕るのです。網を持って水のほうに降りて行く人たち。魚をつるしておく柱が見えます。わたしたちがいる方に進んでくる荷車もありました。袋や縄をかけた薪の束などの荷物を運んぶ男たちも見えました。小さな木造小屋の入り口で、短い茶色のチュニックを着た奴隷娘がこちらを見つめていました。チュニックの切れ目の喉元に、きらりと鉄の首輪が光りました。

突然槍のこじりで荷車の幌布のわたしたちが見ていたところをつかれたので、慌てて幌布を下ろしました。
朝の光の中見回すと、他の娘たちももう起きていました。みんなわくわくしているようです。ローラはわたしにとって始めてのゴルの都市です。ここにはわたしを家に返してくれる人がいるだろうか。荷車の中に鎖でつながれるのはいらいらするなんてものじゃありません。荷車の後ろの垂れ蓋も閉じられているし。幌布はじめじめして、露や霧、早朝の雨で汚れています。自分の名前をわめき散らして助けを求めたい気分を、こぶしを握り締めて我慢しました。

荷車が前に傾いたので、川岸に向かって坂を下りているのがわかりました。そして車輪が泥の中で滑り、左の前輪に車止めして戻しながら、重いブレーキがぎしぎし鳴るのが聞こえました。そのうち徐々にブレーキが効くようになり、荷車はガタガタと揺れながら、滑って前後にスライドして行きました。車輪の下の小石の音が聞こえ、荷車はまた水平になりました。

わたしたちが数分間じっとしていると、ついには川の渡し舟の船長にターゴがうるさく値切っているのが聞こえました。

荷車は木の桟橋に向かい、ボスクが泣き声をあげました。川と魚のにおいが強くなりました。空気は冷たく湿気があり、新鮮です。「奴隷たち、表に出ろ」と聞こえました。

荷車の後ろの垂れ蓋が上げられ、出入り口が後ろのほうに傾きました。

白髪頭の固めの衛兵が足首をつなぐ棒を外しました。

「奴隷たち、表に出ろ」

荷車の後ろに向かうと、足かせが外されました。それから裸で鎖なしで、わたしたちは川の木の桟橋の端に集められました。寒かったです。ふと、水の中に動くものが見えました。大きなとげをうねらせる何かが、桟橋の下からローリウスの入り口に射るような速さで動きました。ちらっと三角形で黒い背びれが見えました。

わたしは悲鳴を上げました。

「リバー・シャークだわ」と、ラナが見て指差し、興奮気味に叫びました。奴隷娘の何人かは目で追いました。ひれが水を切り水面の霧に消えました。

わたしは桟橋の端から、インジとユートの間に身を寄せると、ユートはわたしの体に腕を回してくれました。


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訳者の言い訳と解説

今回から、体裁変えました。
段落の先頭の字下げをやめて、段落ごとに空行入れてます。
使っているブログエディタが仕様変更したようで、字下げできなくなったから。

それはさておき、ついに8章が始まりました。

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