<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(2)
幅が広くて側壁の低い平底船が、桟橋に向かってバックして来ました。大きな舵取りオールが二つ付いていて、乗組員がいました。船は二匹の、水かきを持つ巨大な川タルラリオンに引かせます。タルラリオンを見るのは初めてでした。怖かったです。うろこがあって、巨大で、長い首をしています。体の大きさの割りに、水の中であってさえ優雅な動きです。1頭が水の中に頭を入れて、すぐに上げてまばたきをすると、暴れる銀色の魚をぎざぎざの歯のついた小さなあごにくわえていました。魚を貪り食うと、小さな頭を振り向かせ、今度はまばたきせずにわたしたちを見つめました。幅の広い平底船の引き具がかけられています。タルラリオンは、引き具の一部になっている二頭の間にぶらさがる革のかごにおさまった船の乗組員に、長い鞭の棒で操縦されます。また、乗組員は華やかなゴルの下品な言葉をわめき散らしてタルラリオンを指揮します。彼は桟橋をぎしぎしいわせていました。
ローリウスを渡る自由市民の運賃はタルスク銀貨一枚ですが、動物はたったのタルン銅貨一枚です。ターゴはタルン銅貨21枚を、わたしと、他の娘たちと、新入りの娘と、ボスク4頭ぶんに支払いました。ローリウス川の丘に着くまでに4人の娘を売っていました。ボスクが荷車から解かれ、平底船の前のほうにつながれました。船の前には、槍を持った衛兵が両脇にいる奴隷用の檻(おり)もあって、平板を渡り檻の中に追いやられました。わたしたちの後ろで、乗組員が重い鉄のドアを閉め、ボルトをすべらせるのが聞こえました。後ろを振り向くと、重そうな南京錠がかけられ、わたしたちは閉じ込められました。
わたしは柵を掴み、ローラへと続く川を見ていました。わたしの後ろで、2台の荷車が船の上に積まれ、鎖でつながれました。回転させられる大きな木の輪の上に据えられました。こうして荷車は船の上に運ばれ、輪を回すと同じ方向に動かせます。広くゆったりと流れる川面の霧が晴れてきて、ここかしこ、ところどころがきらきらと輝いていました。数十ヤード右に、水から魚が飛び出しまた水に消えると、鮮やかにきらめいて広がった輪が残っていました。頭の上ではカモメが2匹鳴いています。
革のかごに乗った乗組員が怒鳴り声を上げ、鞭の棒でタルラリオンの首を打ちました。
ローラには、わたしを合衆国に返してくれる人か、そうできる人に紹介してくれる人がいるはずだわ!
0 コメント:
コメントを投稿