<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(3)
川には他の船の船頭もいました。川を渡る者、ローラに向かう者、立ち去る者。ローラからの人たちは流れのみを利用していました。近づいてくる者たちは、陸タルラリオンに川沿いを一歩一歩引かせていました。陸タルラリオンは川を泳ぐことが出来るものの、大きな川タルラリオンほど効率的ではありません。川の両岸ともローラに上がれますが、北側が好まれます。ローリウスの河口にあるリディウスに戻る引き具を外されたタルラリオンは、普通は北側よりタルラリオンの牽引に使われない南岸の道沿いを行きます。そんな川を上る平底船に、金属のような粗製品や、道具類や生地のようなものの入った、たくさんのかごや箱が見えました。下流に向かうにつれ、魚の樽、塩の樽、石、毛皮の梱を運ぶ他の船も見えて、河口に向かって動いていました。上流に向かう船のいくつかには、殻の奴隷用の檻が見えて、わたしたちが監禁されているのに似ていなくもありません。上流に向かう船で、檻のあるのは一隻だけ見えました。4,5人の裸の男の奴隷が入っています。しょげかえり、ちぢこまっているようでした。なぜか髪を幅広く一列剃られていました。ラナはこれを見ると甲高い声で叫んであざけりました。男たちはこちらを見もせず、ゆっくりとローラに向かっています。
ユートを見ると、
「女に捕らえられた男ってことなの。見て」
ユートは丘の上の、ローラの北の森を指差しました。
「とっても大きい森があるの。どこまで東に広がっているのか誰も知らないし、北はトルヴァルズランドまで続いているの。中には森の人がいて、みんな無法者の群れだけど、女性の隊もあるし、男性の隊もあるんだよ」
「女?」
「森の娘って呼ぶ人もいるし、女豹族(パンサー・ガール)って呼ぶ人もいるの。槍や矢でしとめた森の豹の歯や皮を身に着けてるから」
わたしはユートを見つめました。
「女だけで森に住んでるの。男を奴隷にしたり、飽きたら売るけど。屈辱を与えるためにあんなふうに男の人の髪を剃るんだよ。それにね、売られた男は女の手に落ちたんだって全世界の人がわかるようにするのが、彼女たちのやり方」
「その女たちは誰なの?どこから来たの?」と、わたしは尋ねました。
「一度は奴隷になった人たちなのは間違いないわね。あとは自由な女。親の決めた結婚が気に入らなかったのかも。自分の都市の女の扱いが気に入らなかったのかもしれないし。そうかもしれないな。多くの都市では、自由な女は男の人の保護者とか、おうちの人の許可がないと、住まいを出られないの」
ユートはわたしを見上げて微笑みました。
「奴隷娘のほうが行き来が自由で、幸せなの。自由な女より」
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