<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(5)
「見て!」 インジが前方を指差しました。
遠い空の向こう、森の境界線沿いにローラの東から、40人くらいのタルン戦士が、巨大で獰猛で鷹のようなゴルの乗り物の鳥、風の兄弟と呼ばれるタルンにまたがっていました。大きな鳥の背中に乗った彼らは小さく見えました。槍を持ってかぶとをかぶっています。鞍の左側に盾を吊るしています。そういう鳥のことも、そういう男のことも、もちろん聞いています。南のほうで、錯乱した迷える不思議な野蛮人をターゴが鎖につなぐ前に、ターゴを襲ったような人たちです。わたしが見るのは初めてのことでした。
娘たちは怖がり、柵を押して泣き喚き指差しました。
タルン戦士たちは遥か遠くにいてさえ、わたしに恐怖を感じさせました。あんな翼のある怪物を征服できるのは、どんな男だろうと思いました。恐ろしくて、檻の中で尻込みしました。
ターゴは船の前に来て、早朝の日の光から目を遮りながら上のほうを見ました。ターゴは後ろに立っていた片目の衛兵に話しかけました。
「スキャーンのホーコンだ」
片目の衛兵はうなずきました。
ターゴは嬉しそうにしています。
タルン戦士はもう、ローラの影に大きな鳥を着陸していました。
「ホーコンの領地はローラの外、北だ」 とターゴが言いました。
それからターゴと片目の衛兵は、船員が大きな舵取りオールを操っている船尾に戻りました。平底船の乗組員は6人いて、2頭のタルラリオンを指揮する男、二人の操舵手、船長、船の上でのお世話や係留装置つけたり外したりする二人の乗組員です。奴隷の檻の鍵を閉めたのは、世話係のうちの一人でした。
石材や材木、魚の樽や塩が波止場に積んであります。波止場の後ろには、倉庫へ導く長い板のスロープがありました。倉庫はすべすべのがっしりした木材で建てられているようで、汚れていました。ほとんど赤茶けています。屋根は板葺きで黒く塗られています。大きな両開きのドアには、さまざまな色で塗られた彫刻や木工品で飾り付けされていました。大きなドアをくぐると広い中心部があって、もっとスロープがつながっていました。倉庫の中にはいろいろなものがあるようです。スロープの上にも、波止場のあたりにも、男たちが動き回っていました。色々な平底船が荷物を積んだり降ろしたりしています。この地域には村があるだけで、ローラが唯一の拓けた都市です。ローリウス河口の自由港リディウスは、下流に200パサング以上です。新入りは、ゴルの5つの上層階級のひとつである建築士で、リディウスのリーナだった者です。彼女は荷車の中に横たえられ、監禁されたままでした。ターゴはローラではフードもさるぐつわも外さないだろうと思います。どこだかわからせてしまうかもしれませんから。わたしはほくそ笑みました。彼女はターゴから逃げられないんだわ。わたしは激しく柵を揺さぶりました。
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