<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(6)
ローラが近くなり、御者が鞭をふるい掛け声を上げると、タルラリオンは広い川でゆっくりと向きを変え、船は桟橋にバックしました。舵取りオールを持つ操舵手は口汚く大声を上げ、係留所に船を着けました。重く濡れて揺れる船の後ろが、桟橋に当たる衝撃を感じました。別の二人の乗組員がデッキに立っていて、桟橋に固定された大型の鉄の索(つな)止めに輪にした太いロープを投げました。そして桟橋に飛び移り、小さいほうのロープを同じ索止めに結んで桟橋に船を引き始めました。船には後ろの手すりがなくて、デッキが桟橋に合う高さです。ロープをつないだら、荷車を直接に桟橋の上に動かせるのでしょう。
前から男が来て、デッキのボスクをつなぐ輪から鼻輪を引く綱を解きました。船尾のほうから桟橋にボスクを引いてゆきました。荷車を据えた大きな丸い板が回され、轅(ながえ)が桟橋に向きました。ボスクは鳴いて鼻をふんふんいわせたり、ひづめで木をこすりながら、引き具のほうにバックさせられていました。別の乗組員が荷車の鎖をほどきました。
何人かの男が上陸するわたしたちを見に桟橋に降りてきました。立ち止まってしばらくわたしたちを見つめている男たちもいました。
男たちはラフな作業着のチュニックを着ていました。屈強そうな男たちです。
空気に魚と塩のにおいが強く香っていました。
質素なローラにゴルのもっと極上の商品の市場はほとんどありません。トルの金のワイヤーを巻いたもの、タルナの銀塊、シェンディのルビーで作った燃えるような豹の彫刻、バジの東の地のナツメグやクローブ、スパイクナード(カンショウ)や胡椒、花模様のしゅす織物、テュロスの香水、ダークワイン、輝けるアルの華麗な透けているシルクなどはまれに見られるだけです。ローリウス川のこの地域と北の方、巨大な森やトルヴァルズランドへ続く沿岸での生活は、ゴルの標準的な人であっても、とても原始的なものです。わたしたちを見るために立ち止まっている、作業用チュニックを着た強くて手の大きなたくましいローリウスの男たちが、活きの良い奴隷娘であればその体を賞賛しなかったり、愛でず、どうしようもなく触れたくて飛びつかないなんて、考えられません。
「タル、カジュラたちよ!」 男の一人が手を振って叫びました。
ユートは柵に押し寄せて手を振り替えしました。
男たちが喜んでいます。
「誰かに微笑んじゃダメ。ローラで売られたら良くないもの」
ラナが忠告しました。
「どこで売られたってかまわないもん」とユートが言いました。
「ユートは鎖の上位ですもの。ターゴはアルに着くまで売らないわ」 とインジがユートに言ってから、あからさまにわたしを見ました。
「ターゴはあなたを売るかもね。調教されてない野蛮人だし」
ムカつく女ね。
でもインジは正しいのではと不安になりました。この川の港で売られ、残りの人生を漁師やきこりの奴隷として、小屋で家事をして過ごすのかもしれないと思うと、急に恐ろしくなりました。エレノア・ブリントンの運命が何てことなの!ここで売られたりするもんですか!絶対に!
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訳者の言い訳と解説
さて、予約投稿で105話まで毎日更新しちゃうもんね。
ついて来い!!
目次は更新できないが、気にすんな。
しかしbloggerのシステム時間かなにかがずれているようなので、
もしかしたら予約投稿はうまくいかず、明日になっても更新されないかもしれない。
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