<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(8)
ローストタルスクのにおいが強くなりました。嬉しいことに、荷車は向きを変え大きな倉庫のひとつに入って行きました。床がすべすべしています。わたしたちが中に入ると、ドアが閉められました。それからわたしたちはひざまずいて、パンとローストタルスク、そしてあたたかいボスクのミルクを与えられました。
ターゴがわたしを見ているのに気がつきました。
「波止場の男はなんでお前に触った?」
わたしは頭をさげました。「わかりません、ご主人様」
片目で白髪頭の衛兵がターゴのそばに立っています。
「この娘は今では前よりも上手に歩きますね」
「美しくなりそうだと思うか?」
わたしにとっては妙な質問だと思いました。女は美しいか美しくないかのどちらかです。
「なるかもしれません。わたしたちが所有してから美しくなってきました」
嬉しかったけれど、わかってはいませんでした。
「白い絹の娘を美しくするのは難しいんだ」
「そうですね、でも白い絹の娘には良い買い手がつきますから」
わたしにはわかりませんでした。
もう一度ターゴを見ると、「鎖の六番目につなげ」とターゴが言いました。
わたしは顔を下ろし、嬉しくて顔を赤らめました。次に顔を上げたときには、ターゴと衛兵はどこか他のところにいました。わたしはパンとローストタルスクを食べ始めました。5番目の娘と6番目の娘、今では4番目と5番目の娘を一瞥しました。彼女たちにはあまり喜ぶべきことではありません。
「野蛮人のくせに」 と6番目の娘が言いました。
「5番目の娘のくせに」
ターゴはローラでは鎖を展示しなかったので、わたしは安心しました。ターゴはもっと高い値段を望んでいるのです。
食べた後は荷車の横でお互いの首を結ばれ、引き続き木の道を登って行きました。一度、パガ酒場を通ると、中には鈴と宝石を着けているけれど服を着ていない娘が、テーブルの間の四角い砂の上で踊っているのが見えました。原始的な楽器の音色にあわせ、ゆっくり、優美に踊っていました。ぐいっとのどの縛りの紐を引っ張られ、衛兵に槍のこじりで前にせっつかれました。あんなに感覚に訴えてくる女性を見たことはありませんでした。お昼ごろローラの北の奴隷収容所に到着しました。このような収容所がいくつかあります。ターゴは他の収容所と隣接したところをひとつ借りました。わたしたちの収容所は柵の壁ひとつ隔てて、スキャーンのホーコンのものと共同でした。ターゴが北へ旅をしてきたのは、ホーコンとの取引のためです。収容所は窓のない木の宿舎で、床は石の上にわらが敷かれています。1ヤードほどの高さのドアがひとつだけ、運動用の庭に開きます。この庭は大きな鳥かごみたいなものです。その壁は柵で、屋根もあります。屋根の柵は鉄の支柱で支えられています。ローラはこのところ雨でしたから庭はぬかるんでいたけれど、風通しの悪い宿舎の中より気持ちが良いと思いました。わたしたちが収容所でカミスクを許されないのは、多分庭が泥だらけだったからだと思います。
*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:**・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*・゜゚・*:.:*
訳者の言い訳と解説
前に説明があったのですが、忘れたころなので(わたしも忘れていた)、
鎖の順番は、数が大きいほうが上玉。
エレノアが6番目に入ったので、元6番目が5番目に、元5番目は4番目に降格したわけです。
0 コメント:
コメントを投稿