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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
3. 絹の紐(3)
背の高いほうの男は部屋を出て行き、小さいほうの男はぐずぐず理由をつけて部屋に残りました。男はナイトテーブルへ行き、わたしのタバコを一本取り、パリ製の小さくて上品なマッチで火をつけました。
マッチを灰皿に放り込むと、今度は親しげにわたしに触ってきましたが、悲鳴は上げられませんでした。
身をくねらせると、男はにやりと笑いました。
「君は冷たい女ではないな。鈍いふりをしていても、君は縛られた、ふしだらな女だ。新しい状況に順応したら、どんな風になるだろうね」
何を言っているのか理解できませんでした。
「君は見込みがある。今だってちゃんと反応したなら、それなりの値打ちがあると思うね」
わたしは男を見上げました。
「それにいずれは」男が言いました。「保証しよう。君は哀れっぽくお願いするさ。そのために腹ばいと懇願をする」
この人は頭がおかしいのだと思いました。
でもわたしは思い知ることになるのです。そうではないと。
「そう。そのために君は腹ばいと懇願を学ぶんだよ、あばずれちゃん」
男は狂っているわけではありませんでした。
「首輪が似合っていますよ」
わたしはもがきました。
「君は首輪にふさわしい」
わたしはむなしく縛(いまし)めを引っ張りましたが、無駄な努力でした。男を見上げると、
「何か言いたいんだね。でも駄目だ。縛られてさるぐつわをされるのは気に入ったかな?」
男が訊ねました。
私はすすり泣いて抗議しました。
男はまた手をあげ、こちらに手を伸ばしたので、わたしはぶんぶん頭を振りました。イヤ、イヤ、やめて!
でも男はわたしには触れず、
「おもしろいね。縛ってさるぐつわをすると、女にはてきめんだな」
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訳者の言い訳と解説
どう訳そうか一番悩んだところは、
「君は冷たい女ではないな。鈍いふりをしていても、君は縛られた、ふしだらな女だ」
"You aren't the cold,~"
でした。coldは不感症の意味で使ってるんだと思うけど、
エリノアは何言ってんのかワカンネ
と思うわけなので、不感症じゃ直接的すぎるし、
冷感症は現代の一般的な言葉ではない。
「音楽が聞こえないわけじゃないな」なんて、
三島由紀夫風もオツだけど、原文から離れすぎる。
結局シンプルに、冷たい女にしてみました。
こういうところに力量が出ちゃうんだね;;
意外といろいろ考えて言葉を選んでるんだよ。
そのわりに誤字脱字が多いけど。ぐほっ。
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