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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
3. 絹の紐(15)
いらいらして首の金属の輪を調べました。輪に刻まれた文字はもちろん読めません。文字なのかさえ判別できないし、単に流れるような模様かもしれません。でも 間隔の取り方や造形が、そうではないと物語っています。錠は小さいけれど、頑丈で、輪はぴったりとフィットしていました。
鏡を見ていると、ある考えが頭をよぎりました。これもあのしるしみたいに、魅力的じゃないこともないわ。わたしのしなやかさをいちだんと引き立てています。でも取り外すこと はできませんでした。刹那的に、誰かの虜囚として、持ち物として所有されているのではないかと、救いようのない気持ちになりました。一瞬の空想が胸をかすめました。こんな首輪をはめられ、こんなしるしをつけられ、裸で異邦の男の腕の中にいる。体が震えました。こんな気持ちになったことはありません。
鏡から目をそらしました。
明日この金属の輪を外してもらおう。
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