2009/05/17

ゴルの虜囚 20 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

3. 絹の紐(11)

 暑い夜だったけれど、勢いよく流れてゆく空気に髪がなびき、生き返った気持ちになりました。
 うまくやったわ。
 脱出したのよ!
 警察官の前を通ったので、止まるつもりでいました。助けてくれるかもしれない。守ってくれるかもしれないわ。
 でもどうかしら?あいつらは警察の制服を着ていたもの。あの警察官はわたしのことを精神異常で頭がおかしいと思って、この街に拘留するかもしれないわ。あいつらがいて待ち構えてるかもしれないじゃない。何者かも知らないし、目的もはっきりわからないのよ。あいつらはどこにいてもおかしくないわ。今は逃げなくちゃ。あいつらから、逃げるの!
 外の空気を吸うと元気がわいてきました。脱出したわ!車の流れを遠慮なくさっと縫うように走ったので、他の車はしばしば急ブレーキをかけねばならず、クラクションを鳴らしました。わたしは頭を後ろに傾けて笑いました。
 すぐに街を出て、ジョージ・ワシントン橋を渡り高速道路を北に向かいました。数分でコネティカットに入りました。
 運転しながら腕時計を滑らせました。
 その時、午前1時46分。
 心の中で歌を歌いました。
 わたしはまたエリノア・ブリントンに戻ったのよ。
 この高速道路をたどらず、交通量の少ない道を行った方が良いかもしれないと思いつきました。
 高速道路を降りたのが、午前2時7分。
 車が一台後に続いてきていました。気にしていませんでしたが、四回ほど迂回してもまだついてきます。
 不意に怖くなってきて、スピードを上げました。その車もスピードを上げました。
 苦悶の叫び声をあげました。わたしはもうエリノア・ブリントンじゃないんだわ。常に自制心があったわたし、お金持ちだったわたし、洗練されたわたし、あれほど極上の品と知性があったわたし。今はただのおびえた小娘に過ぎないんだわ。身に覚えのないことで逃げてる、うろたえて混乱した小娘。太ももに印が、首に鍵のかかった金属の輪がぴったりと付いてるんだわ。
 違う。心の中で叫びました。違うわ。わたしはエリノア・ブリントンのはずよ!わたしがエリノア・ブリントンよ!
 ふと、わたしは冷静に、速く、効率的に、鮮やかに運転し始めました。あの人たちが追ってくる気なら、もうやってるはずだわ。このちょろいゲームで、エリノア・ブリントンを見つけてないんだわ!あの人たちが何だか知らないけど、エリノアはもっと強敵ってことよ。このエリノア・ブリントンだもの。リッチですばらしいエリノア・ブリントンなんだから!


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訳者の言い訳と解説

 おかげさまで連載20回目となりました。
こんなつたない翻訳でも読んでくれてるみんな、ありがとう!

 さて、今回はエリノアが自分をお金持ちとか洗練されてるとか言っているところは、
one, she, herが使われています。
本来は、客観的評価をしているように翻訳すべき箇所だと思います。
日本人には自分を客観的に見る気質がないため表現がなじまないのと、
わたしがわたしと表現したほうが、エリノアの自惚れっぷりが出るかな、
などと言って記念すべき20回目のお茶を濁したいと思います。

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