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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
5. 三つの月(1)
何が起こったのか推測するのは容易ではありません。
どのくらい意識を失っていたのもかわかりません。
わかっているのは、目を覚ますと草の上で顔を横にしてうつぶせになり、意識が朦朧としていることだけです。指が草の根をむしり取っていました。叫び声をあげたかったけど、身じろぎしませんでした。八月のあの日の午後と夜のできごとが脳裏をかすめました。目を閉じて、眠りに戻らなくては。目を覚ませば、自分の部屋の白いサテンシーツのベッドにいるに違いないわ。でも頬に当たるみずみずしい草が、なじみのある部屋にいるのではないことを物語っていました。
手とひざをついて体を起こしました。
目を細めて太陽のほうを向くと、何かが違うように感じました。手を動かし地面に立ちました。
恐怖に胃の中のものがこみ上げてきました。
地球ではない。わたしの知っている地球ではないと気づきました。別の世界、違う世界、わたしの知らない奇妙な世界。
空気がすばらしく澄んできれいな気がして、こんな空気は初めてでした。草は露に濡れ鮮やかな緑。わたしはどこかの草原にいて、遠くに高い木々がうっそうと生えていました。そばに咲く小さな黄色い花を、途方にくれて見つめていました。こんな花は見たことがありません。森から遠く向こうに、黄色っぽい藪と木が見えました。木は緑ではなく、鮮やかな黄色でした。近くで小川の音が聞こえました。
怖いわ。
小さくて紫色の鳥が頭の上を飛んだので、悲鳴を上げてしまいました。
遠くの黄色っぽい藪の近くで、小さな黄色い動物が優雅に動いているのが見えました。遙か遠くで、良く見えません。鹿かガゼルだろうと思いました。その動物は、藪の中に消えました。
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