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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
4. 奴隷のカプセル(5)
わたしを追ってきた小さいほうの黒っぽい円盤から、男が一人近づいてきました。
「時間がないぞ」
背の高い男はうなずきましたが、慌てた様子も急ぐ様子もありません。
注意深くわたしを見て、
「まっすぐ立て」と急かすふうでもなく言いました。
わたしはまっすぐ立とうとしましたが、腕は衝撃で麻痺したままで、指も動かせません。
背の高い男は、枝で打って切れて血の出ているわたしのおなかに触ってから、頭のほうに手を上げて、切れた頬を見て言いました。
「我々には喜ばしくないな」
わたしは何も言いませんでした。
「膏薬を持って来い」
男が言いました。わたしはまた何も言いませんでした。
軟膏が持ってこられ、二つの傷に男が軟膏を塗りました。匂いはしません。驚いたことに、たちまちに吸収されたようでした。
「もっと気をつけたまえ」
わたしはやはり、何も言いませんでした。
「自分でしるしか、焼印を付けたかもしれないんだぞ」
男は軟膏を他の男に返してから、わたしに言いました。
「かすり傷だ。傷跡は残らず治るだろう」
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