2009/05/17

ゴルの虜囚 5 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

1. 焼印(5)

 月曜日の午後に仕事があって、水曜日の朝にスタジオに報告することになっていたので、火曜日は仕事が休みでした。夜になる前に有色人種のメイドを帰し、水曜日の分まで料理を作りました。家で1人で読書をして、音楽を聴きたくて。
 月曜日の深夜に眠りにつきました。
 もう昼近くまで、裸で白いサテンのシーツにくるまって眠っていましたが、カーテンを通して差し込む太陽の光で目を覚まし、伸びをしました。
暖かくて、けだるい、けだるい日。
ベッドのそばのナイトテーブルにある灰皿に手を伸ばし、タバコに火をつけました。部屋にいつもと違う所はなく、ふわふわのコアラのぬいぐるみがベッドの足元に転がり、本は机の上に。ランプシェードは昨日と同じように少し傾き、化粧台の上には合わせなかった目覚まし時計。タバコは味がしなかったけど、吸いたいと思いました。シーツの上にもう一度横たわり、また伸びをしてから足をベッドのわきに下ろし、スリッパを履きました。シルクのガウンをはおり、タバコを灰皿に突っ込んで揉み消して、シャワーを浴びにバスルームに向かいました。
 髪を結い上げて、ガウンを肌からすべり落とし、シャワールームのドアを開けて中に入りました。暖かいシャワーに、すぐにゆったりした気分を味わいました。
良い日だわ。
暖かくて、けだるい、けだるい日。
 しばらく頭を傾け、目を閉じてたたずんでいると、暖かいお湯が体じゅうにしたたりました。せっけんを手に取り、体を洗い始めました。
 せっけんを持つ指が左の太ももに触れたとき、はっとしました。何かがある。触れたことのない何かが。
 左側に体を曲げ、左足を真っ直ぐに伸ばしました。
 突然目の前が真っ暗になり、息もできないまま、恐る恐る太ももを見ました。
 痛みは感じません。
 でも昨日の夜まではなかったわ!
  でも今、太ももの上のほうにしるしがついています。1インチ半くらいで、優美な筆記体でした。なかなか魅力的ではあります。自然につくような傷あとではあ りません。深く誤りなく完璧に施されたものです。慎重に、正確につけられたしるしでした。あえぎながら、もたれかかっている壁の感触を感じていました。呆 然としてせっけんの泡を洗い落とし、シャワーをとめました。バスルームをあとにし、部屋のわきの全身が写る鏡の前のじゅうたんを、濡れた体のまま裸足で歩 きました。そこでまた息をのみ、部屋がぐるぐる回っているような気がしました。知らないうちに、鏡にしるしがあったのです。わたしのいちばん赤い口紅で鏡 に書かれていました。1フィートくらいの高さで、太ももにある優美な筆記体と同じしるしでした。
 信じられない思いで鏡を見て、太もものしるしにもう一度触れてみました。そしてまた鏡の表面に口紅で書かれた赤いしるしを見ました。じっと自分を見つめていました。
 全然わけがわからないけれど、とにかく誤りなくきれいに深く刻み込まれたしるしが太ももについていました。
 すべてが真っ黒になって、鏡の前のじゅうたんに崩れ落ち、気が遠くなってゆきました。

 わたしは、焼印を押されていたのです。

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