2009/05/17

ゴルの虜囚 3 【CAPTIVE OF GOR】

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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

1. 焼印(3)

 父はシカゴで不動産で財産を作りました。わたしが知る限り仕事だけを気にかける人で、キスをしてもらった覚えがありません。わたしの前で母に触れたことがあるのか、母が父に触れたことがあるのかも、思い出せません。父はお金儲けにも興味がなかったはずです。事実、どんなに他の人より稼いでも、もっと裕福な誰かがいるのです。父は幸せじゃなくて、追い立てられているような人でした。
 母は海岸に広大な所有地を持つシカゴの裕福な家の出身です。家でパーティーをたびたび開いていました。父は母がいちばん値打ちのある財産だと一度言ったことがあります。褒めたつもりでしょう。母はきれいな人でした。飼っていたプードルを、靴をかじったからと毒で殺してしまいました。そのときわたしは7歳で、ひどく泣きました。わたしに懐いていたのに。卒業式に父も母も来てくれず、それが人生で2回目に泣いたときです。父は仕事の契約があり、母は住んでいるニューヨークで友人と会食をしていました。母はカードと高価な腕時計を送ってくれたけど、腕時計は誰かにあげてしまいました。
 ある夏に父はまだ40代なのに心臓発作で亡くなりました。
母は今でもニューヨークのパーク・アヴェニューにある広いアパートに住んでいると思います。土地のほとんどは母が相続し、わたしが受け取ったのは75万ドル、主に市場で大きく変動することもある株や債権でしたが、手堅いものでした。その日の資産が50万ドルでも75万ドルでも、それほど興味はありませんでした。
 卒業後、わたしはパーク・アヴェニューにある最上階の部屋を借り、母とはお互いに会わず、しばらく何にも興味を持ちませんでした。嫌いなのにタバコをたくさん吸いました。お酒もかなり飲みましたが、ドラッグはくだらないので、けっして手を出しませんでした。
 父はニューヨークで仕事上のコネがたくさんありましたから、母は友人たちに影響力がありました。わたしはモデルになることばかり考えていて、卒業後数週間は母にはほとんど電話をしませんでした。刺激があって、おもしろくて楽しい人たちに出会えるんだろうと考えていました。

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