→ 目次
<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
5. 三つの月(6)
生き返った気持ちで、力が沸いてきたので立ち上がりました。憂鬱に見回して食べ物を探しましたが、調理用具がいくらかあるだけで、ナイフも武器として使えそうな物もありませんでした。
それから、この船に長く居すぎたかもしれないと思いました。死体はないけど、ベッドに血のしみは見つけていました。生存者がいるなら戻ってくるかもしれません。怖くなってきました。食べ物を探し、食べることに夢中で、全て忘れていたのです。
調理室のドアを開けると、鳥のさえずりが聞こえました。
小さな鳥で、すずめくらいの大きさですが小さくてふくろうにちょっと似ていて、目の上にふさがありました。紫がかった色でした。こちらをいぶかしげに見ながら、折れたパイプに止まっていました。
少しの間こちらを見てから、せわしなく羽を動かし、船から飛び去ってゆきました。
わたしも、船から逃げ出しました。
外はすべてが平穏に見えました。立ち止まりました。船のずっと後ろには、暗い森。草原は右側に伸び、もうちょっと左のかなたには、さっき見た黄色っぽい藪がありました。太陽の位置は変わり、影が長くなっていました。この世界の、午後だろうと判断しました。寒くはありません。この世界に季節があるなら、春に違いないと推測しました。ここの年はどれくらいの長さなんだろう。
もっと近くを見回すと、そこに何か、恐らく朝早くに箱か何かが置かれたような、草が踏みつけられたところがいくつかありました。草の上には、あるところには女性の髪の毛の房、別のところには黒ずんだ赤茶色のしみ。
逃げなくちゃ!
森のほうを向きましたが、その暗闇に恐怖心が沸きました。
突然、森のはるかかなたから澄んだ空気を貫けて、大きい動物か何かの咆哮が轟いてきました。
森に背を向け、地平線に向かってやみくもに草原を走りました。
それほど走らないうちに、空の向こうに、敏捷に動く銀色っぽい円盤状の物体が見えました。こちらに向かって急速に動いています。草の中に飛び込み、手で頭を覆いました。
0 コメント:
コメントを投稿