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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
4. 奴隷のカプセル(12)
奇妙な感覚はかなりのあいだ続きました。しばらくすると、何分かシリンダーの側面にひどく押しつけられました。すると突然なんの力もかかっていないようになり、シリンダーの反対側に押し流され、怖くなりました。指一本の力で、ひどく押しつけられていた側から戻ることができました。下降しているのだと思いました。しかしすぐ後に、底に金属の板の付いたサンダルを履いた、黒いチュニックの男の一人が、一歩ずつ慎重に金属の床を横切りました。そこは床だったけれど、今はわたしの左側の壁になっていて、不思議と男が壁を動いていたのでした。
わたしは惨めに叫び声を上げました。
今やこのカプセルの中で、絶望的に方向がわからなくなりました。
方向感覚が全くなくなり、どっちが上か下かも、もはや方向があるのかさえもわかりません。
男はシリンダーに引き込まれたホースが繋がっている機械のところへ行き、小さなダイヤルを回しました。
すぐに何か違う空気が、わたしの入っているシリンダーに送られていると気づきました。
様々なスイッチの下に、他にも同じようなダイヤルがあり、疑いなく各容器のものでした。
男の注意を引こうとして叫びましたが、明らかに聞こえていません。それか、そんなことには関心がないのでしょう。
今は穏やかな力がわたしをシリンダーの別の側に引っ張っていることに、漠然と気がつきました。今は天井も床も元通りになっていることにも、漠然と気がつきました。意識が完全にははっきりしない中で、男が部屋を出て行くのが見えました。
プラスチックの容器ごしに外を見ました。硬くて、湾曲した透明な牢獄の壁に頭を押しつけました。
裕福で、賢くて、自惚れが強くて、傲慢で、誇り高きエリノア・ブリントン。確かなことは、逃げられなかったこと。
エリノアは囚われの身。
エリノアは自分に何が起きたのか、拘束されていずこへ行くのか、生きる運命かも知りません。
意識がなくなってゆきました。
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訳者の言い訳と解説
第4章終了です。
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