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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
6. 奴隷商ターゴとの邂逅(1)
明け方近くに目を覚ますと、とても寒くて、どんよりとじめじめした天気でした。ひどくお腹が空きました。体はこわばっていて痛み、すすり泣きました。葉の長い草の露を吸いました。わたしは一人ぼっちなんだわ。服は濡れて、惨めでした。わたしは一人ぼっち、たった一人なんだわ。怖くて、お腹が空いて、涙が出ました。
わたしが知る限り、この世界にいるのはわたしだけかもしれない。船はここで壊れたけれど、この世界のものではないのかもしれません。他の船が難破船を破壊しに来たけれど、その船もこの世界のものではないのかもしれません。壊れた船の生存者も見てないし、他の船も立ち去ってしまいました。わたしが知る限り、わたしがこの世界の唯一の人類なのかもしれないわ。
立ち上がりました。
周りには、ほの暗い明かりを反射し、きらきら輝く柔らかな露が、波打っていました。草原が見えるばかりで、果てしなくうねりが続き、何もないかもしれない地平線に囲まれたわたしを拒絶していました。
わたしは、孤独でした。
原野の真ん中を歩いてゆきました。
清らかな朝に、鳥のさえずりが聞こえました。近くの草の中に、わずかに動きがありはっとしました。二つの長いげっ歯のある毛皮の小さな生き物が、軽快に走り去って行きました。
歩き続けました。
本当に飢えてしまうわ。食べるものは何もない。泣き叫びました。
一度空を見上げると、大きくて白くて広い羽の鳥たちが見えました。薄墨色の空高くに、あの鳥たちも寂しいそうにしていました。あの鳥たちもお腹が空いているかしら。
わたしはとぼとぼと歩いていました。
何が起こったのか理解できません。あまりにも大ごとで、あまりにも理解しがたいことです。あの八月の朝に目を覚ましてシャワーを浴びたこと、男たちから逃げようとしたこと、地球の林を疾走したこと、船、わたしが入れられたプラスチックか何かの、厚くて透明なシリンダーやチューブのことを思い出していました。
そして今、わたしは一人ぼっち。
エリノア・ブリントンは、ひとりぼっちで知りもしない世界の原野を彷徨っているのです。
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訳者の言い訳と解説
奴隷商ターゴは、2巻だったか3巻に出てくる、
タルゴかも。Targoなので発音はターゴの確率が高いのではないか、
ということでターゴにしています。
追記:やっぱり2巻のタルゴと同一人物みたいです。
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