<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(16)
ある日の午後、ターゴがわたしを傍らに呼びました。
「奴隷よ」
何かをしでかした覚えがなくて、怖くてターゴのところに駆け、足元にひざまずいて頭を降ろしました。
「顔を上げなさい」
わたしはそうしました。
「展示の鎖のときは、また前につなぐ。お前は11番目の娘だ」
わたしは耳を疑いました。
「ありがとうございます、ご主人様」 と小声で言いました。
ターゴはローラに来る前に4人売ったので、鎖には今16人の娘がいます。100人の村娘は展示の鎖につなぎません。アルで売るための娘たちです。
「お前は今では鎖の上位だ」 ターゴが言いました。
わたしは頭を下げました。
「お前はもう少しで美しくなる」
顔を上げたときにはターゴはいませんでした。
すごく嬉しかったです。
収容所のかんぬきのかかった門へ走ると、衛兵がかんぬきを外しました。中へ入ると衛兵は門を閉め、かんぬきをまたかけました。
入る前にカミスクを脱がされませんでした。今では収容所の中でカミスクを着るのが許可されています。村娘でさえも昨日、衛兵の監視のもと、自分たちのカミスクを裁縫していました。カミスクを着て嬉しそうです。スキャーンのホーコンの襲撃者たちに連れてこられて以来、初めて許された服です。どうして収容所での服を許可されたのか、はっきりとは知りません。当然、もう天気は良いし、収容所も泥だらけではないからでしょうけど、わたしは本当にそうだとは思っていません。ターゴはむしろ単純にわたしたちに大いに満足しているからだと思います。わたし自身を含め、前からいるターゴの奴隷娘は一級品です。新しい娘、リディウスのレディ・リーナをテュロスの軍司令官のためにアルへ届ければ、金貨55枚をターゴにもたらします。そして100人の村娘は一人たった金貨2枚でしか売れませんが、愛餐(アガペー)の前にアルに連れて行けば、ターゴの懐を膨らませるに充分な値段です。ターゴは機嫌が良かったのです。思うに、こういうわけで収容所での服を許可したのでしょう。
11番目の娘になったと言いに、ユートとインジのところへ走りました。抱き合ってキスをしました。
ラナは当然上位で16番目。インジは上層階級だったけれど次の15番目、ユートが14番目。
鎖の上位は羨望の的になるだけではなく、もちろん普通は値段もより高くなるし、所有する人もいくらかより良い思いをするでしょう。
わたしは粗野なカミスクを着て、ユートとインジの前で自慢しました。
「もしわたしのご主人様がわたしにシルクを着せたら」
わたしたちは笑いました。
「エリ=ノ=アがパガ酒場の店主に買われないことを願いましょう」と、インジが言いました。
イラッとしてインジを見ました。
「彼らはすばらしい娘を買うだけのお金を払えることがよくあるもの。多くの個人のご主人様よりもね」
わたしはつばを飲み込みました。
「いずれにせよ、よりによって奴隷娘がパガ酒場に買われることは本当にほとんどないことよ」
わたしは喜んでインジのほうを見ました。
「恐らくあなたは給仕奴隷や塔奴隷として買われるわ」
わたしはカミスクの中で享楽的に伸びをしました。
「いいえ」 惰性で言いました。「わたしは快楽奴隷として買われると思うの」
ユートは喜んで、手をたたきました。
「でも訓練を受けていないじゃないの」 と、インジが指摘しました。
「覚えるわよ」
「聞いたんだけどわたしたちみんな、コ=ロ=バの訓練所で訓練を受けるんだって」 と、ユートが言いました。
そのことはわたしも耳にしています。
「わたしが立派に訓練を受けるのは間違いないわ」
「あなたが来たときから、すっごく見違えたね!」 ユートが感激の声を上げました。
「エリ=ノ=アは……、わたしが、書記階級でも、男の人を喜ばせられるって思うかしら」 とインジが尋ねました。
「カミスクをお脱ぎなさい。そうすれば査定してあげる」
わたしが言うと、インジは笑いました。
「わたしはどう?」 ユートが
わたしたちはユートを笑いました。ユートはどんな男にとっても宝物になるであろうことを、わたしたちはちっとも疑っていません。
「ええ、とびっきりにね!」 インジが暖かい声で言いました。
「でも、みんな同じご主人様に買われないとも限らないじゃない?」 ユートが泣き声になりました。
わたしはふたりに向かって前かがみになり、脅すように叫びました。「目玉をかき出してやる!」
みんなで笑って、また抱き合ってキスをしました。
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訳者の言い訳と解説
Love Feast:愛餐(アガペー)
詳しいことは忘れたが、ゴルの奴隷売買祭りみたいなののことだったと思う。
本来の意味はキリスト教の酒宴的なものか何か。
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