<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(11)
ローラの外のターゴが借りた収容所に、わたしたちはまるまる6日いました。
そのうち5日は、朝に他の4人の娘と紐につながれてローラに連れてゆかれ、生活用品を運んで来ました。二人の衛兵が同行しました。でも面白いことにある建物のところで、衛兵の1人がわたしを他の娘たちと別にして、その衛兵とわたしは建物の中へ入って行き、他の娘たちは引き続き市場に向かいました。みんなが市場から帰ると建物のところで呼んで、わたしと衛兵は外に出ました。そこでわたしはまた他の娘たちとつながれ、荷物を分配し直して自分の持分を手に取り、奴隷娘のように荷物を頭の上に乗せてバランスを取りながら運び、衛兵の監視の下、収容所に帰りました。最後の2日はわたしがそうお願いして、頭でワインのつぼを運ぶのを許されました。ユートがこぼさない歩き方を教えてくれていたのです。男たちがわたしを見ているのが楽しかったです。すぐに、他の娘たちや、ユートとさえ同じようにワインを運べるようになりました。
そのとき訪問することとなった建物は、医師の家でした。廊下を通って、奴隷を扱う特別の粗末な部屋につれてゆかれました。そこではカミスクを脱がされます。医者は医師階級の緑の服を着た穏やかな男で、最初の日、念入りにわたしを検査しました。医者の使った道具、行ったテスト、必要としたサンプルは、地球と同じではありませんでした。特にわたしの興味を引いたのは、原始的なものなのかもしれないけれど、建築士の発明で、ゴルの人にエネルギー球と呼ばれるもので部屋が照らされていたことです。コードもバッテリーのケースも見えませんでした。医師がエネルギー球の底を回して調節し、既に部屋は柔らかな暖かい白い光に包まれていました。それに、医師の機材の一部は、明らかに原始的とは程遠いものです。たとえば、メーターとダイヤルのついた小さな機械がありました。この中に、医者は血液や尿のしずく、組織片、髪の房のスライドを置きました。ペン型の器具で機械の上に記録を書き込み、機械の上部の画面にはすごく拡大した、顕微鏡で見た映像を思わせるものが見えました。医者はその映像を簡単に調べ、ペン型の器具でさらに書き留めました。医者の質問がどんな性質のものであっても、迅速に正確に答えなくてはならないことを除いては、医者に話しかけることは衛兵が厳しく禁止していました。医者は思いやりのない人ではありませんでしたが、わたしを動物として扱い、動物とみなしていると感じました。検査をしていないときは、また呼び出されるまで部屋のすみに行かせ、そこでわたしは板の上で一人でひざまずきます。わたしがそこにいないかのように、わたしについて話し合うのです。
医者はいくつかの粉を三、四つの足つきのグラスに混ぜ終わると、水を加えてかき回しました。それを飲むように言われ、最後のは特にまずかったです。
「安定血清が必要ですよ」 医者が言いました。
衛兵はうなずきました。
「注射4回で投与します」
医者は部屋の角の重く光る斜めの台のほうに目配せしました。衛兵はわたしを連れて、台の上にうつぶせに投げ出し、手首を上に上げさせ大きく離し、皮の紐で留めました。同じように足も動かないようにしました。医者は別の部屋の薬びんが積んである棚の前で液体や注射器で忙しくしていました。
わたしは悲鳴を上げました。痛い注射です。右の腰の上のくびれたところに注射されました。
医者に話しかけたくてたまらなかったです。この家、この部屋には、進んだ技術を物語る道具があります。原始的で、美しく、過酷な世界でわたしが遭遇してきたものとはかけ離れています。衛兵が槍のこじりでわたしの背中を押したので、部屋から押し出されました。肩越しに医者を見ました。医者はいぶかしげにわたしを見ていました。
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訳者の言い訳と解説
6巻までのゴルをお読みの方にはおなじみの、「エネルギー球」と「安定血清」が出てきましたね。
なんかもう忘れてたけど、やっぱりこれは反地球シリーズなんだったと思い出しましたよ(笑)
安定血清については後日説明します。
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