2011/04/15

ゴルの虜囚 107 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

8. ローラの北での出来事(25)

別の衛兵が荷車の一台に消え、彼が戻ってくると奴隷の鈴の音が聞こえました。

ラナは紐に二列についた鈴をウエストや足首につけてもらう間、誇らしげに炎の横に立ち、頭をのけぞらせ手を下ろして広げていました。

そうこうするうちに他の衛兵がまたカ=ラ=ナの瓶を前に持ってきました。衛兵が瓶を持ちラナに飲ませてから、ユートとわたしの分をよこしました。カ=ラ=ナが少し残って衛兵に返すと、今は鈴のついたラナに瓶を渡しました。野生的な鈴のジャラジャラと鳴る音をさせ、ラナはくびをのけぞらせて飲み干しました。

ラナは瓶を投げ捨て、頭を下げ、そしてそれから顔を上げて後ろに倒し、前後に振り髪をなびかせ、右足を踏み鳴らしました。

ユートと衛兵たちは歌って手拍子を始め、一人は革の盾を打ち鳴らしました。

荷車の向こうの闇の中で、何かが動いた気がしました。

ラナは一瞬動きを止め、手を頭の上に挙げて問いただしました。「美しいのは誰?男を悦ばせられるのは誰?」

「ラナよ!」わたしは我知らず叫んでいました。「ラナが美しい!ラナが男を悦ばせる!」自分を抑え切れません。感動してぼうっとしてしまい、圧倒されました。自分の性別がこれほどに美しいなんて知りませんでした。ラナは信じられないほどに美しい。並外れて、完全に、驚くほど美しい。
わたしは声も出ないほどゾクゾクしていました。

そしてラナは嵐のような奴隷の鈴の音を鳴らし、男たちの前で火明かりの中、踊っていました。
ふと気がつくと、カミスクを留めた縛りの紐の中に、わたしが側にひざまずいている衛兵の手がありました。

片側にこそこそした動きを感じたのです。

「ご主人様・・・・・・?」

衛兵はラナを見ておらず、彼の側にひざまずくわたしを仰向けに寝そべって見上げていました。

奴隷の鈴の音、ユートと男たちの歌声、手拍子、革の盾を打ち鳴らすリズム。

「キスしろ」

「わたしはホワイト・シルクです」 と小さな声で答えました。

「キスしろ」

わたしは男のほうにかがみました。ゴルのカジュラは、ご主人様に従わねばならないのですから。わたしの髪が男の顔を撫でました。

わたしの唇が、そっと、従順に、男のほうへ降りてゆく。わたしは震えていました。開いた唇は、あと1インチのところで止まりました。

いけない。何かが心の中で警鐘を鳴らしました。駄目!わたしはエレノア・ブリントンなのだから!わたしは違う!奴隷娘なんかじゃない!

引き離そうとしましたが、男の手はわたしの腕をしっかりとつかんでいます。

わたしは恐ろしくて、逃れようとあがいていました。

わたしは自由を奪われた、男の囚われびと。

彼はわたしがおびえて抵抗するのに混乱した様子でした。でもわたしは、無力さを感じるとともに激しい怒りを覚えていました。この衛兵なんか大嫌い。男なんか皆、男の力もムカつく。男ときたらわたしたち女を食い物にして、支配して、無理やり仕えさせて、命令に従わせるじゃないの!残虐な仕打ちをするじゃない!わたしたち女を人間だと思ってない!

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訳者の言い訳と解説

性別がなんちゃら・・・という記述が出てきますね。
作者のジョン・ノーマンは哲学者で、
女は女の性別で、男は男の性別で生きていくのが自然だという
思想を持っている人らしく、その哲学がゴルの物語にも反映されています。
それが「女は奴隷」なのか?と言うと、実はノーマンはそう思っている
わけでもないことが読み取れます。
でも小説中のどの部分がノーマンの哲学なのか、
コアなファンでも判別できないとか。

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