2011/04/03

ゴルの虜囚 95 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

8. ローラの北での出来事(13)

当然、わたしはもう医者に話しかけようとはしませんでした。

四日目、安定血清の最後の注射を受けました。五日目、医者は試験結果を手に取り、血清の効果を断言しました。

五日目に医者の家を出るときに、医者が衛兵に「すばらしい検体ですよ」と言うのが聞こえました。

四日目と五日目は、ワインを運んで収容所に戻るのが許されました。

人生であれほど健康に感じたことは本当にありません。それだけでなく、澄んで清らかな空気、抜けるように青い空、くっきりとした白い雲。収容所に向かってローラの坂道を登り、つながれ、監視され、右手でバランスを取りながら頭の上のワイン壷を運び、囚われの我が同胞たちの中で、ゴルの狂信的な空気を吸い込み、突然、わたしは幸せだと悟りました。裸足でも、首に紐を付けられていても、カミスクをまとっていても、男の言いなりの奴隷の身に堕ちても、多分生まれて初めて、逆に生き生きと喜びにあふれる幸せを感じました。きちんと背筋を伸ばす人、はばからず優しくよく笑う人、たくましい足の人、長くて立派な腕と頑丈な手、立派な胸と頭の人。そんな人たちを見たいと思いました。偶然かのごとく近くに立ったり、さっと通り過ぎるときにでも、うっかりしたかのように触れたり。時々男たちはわたしが見ているのに気がついて、わたしは彼らのにやにや笑いに反応し、急いで恥ずかしそうにうつむくの。他の娘たちの中で、革製品やサンダルをきれいにしろと放られるときも嬉しいの。わたしは上手にやるから。収容所の近くの小川の石で、男たちの服を洗うのも嫌いじゃありません。服を取り扱うのも、甘美な強さがしみついた丈夫な生地を感じるのも好きです。一度、ユートがわたしを捕まえて、医者のところでわたしを見張った衛兵のチュニックを頬に押し付けたので、目を閉じました。水の中の平らな石の間に立っていたユートは、歓声を上げて飛び上がり、わたしを指差しました。他の娘たちも見て、ひざをたたきながら笑いました。

「エリ=ノ=アはご主人様が欲しい!」 とユートが囃しました。

水をはねかけながらユートを小川の中に追いかけて、ユートはよろけながら逃げ、方向を変えて岸に逃げ戻りました。ユートもみんなも指差して笑っています。わたしは小川にひざの深さまで浸かっていました。

「エリ=ノ=アはご主人様が欲しい!」 みんなが笑いながら大声で言いました。

わたしは強くこぶしを握り、小川の中に立っていました。

「そうよ」 と叫びました。「わたしは、ご主人様が欲しい!」

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訳者の言い訳と解説
  原文にない言葉入れちゃいました。
一度やってみたかっただけなので、もうやらない、と、思う。

  安定血清というのは、老化を止めるゴルの薬です。
たまに安定血清が効かない人がいますが、
肉体的に全盛期のままになり、年をとって死ぬということがなくなります。
この、死なない=“成長しない”という点が、反地球シリーズの大きな特徴です。

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