<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(26)
「触らないでよ」
男はやすやすとわたしの体をひっくり返し、背中を地面に押し付けました。
「やめてよ!あんたなんか大っ嫌い!」
男の目に怒りの色が浮かんで来ました。わたしの体をきつく押さえています。そしてわたしは、ホワイト・シルクにもわかるほどの別の目つきに気づき、狼狽しました。ただ使われて、終わりではないのだと。苛立ちを感じ、うめき声を上げました。忍耐強くケアされ、デリカシーと細心さを以って使われるのでしょう。わたしが男に服従するまで。誇り高く怒れる自由なわたしが、打ち砕かれ、懇願する卑しい女奴隷に堕ちるまで。
「お願い、やめて!」
体の中に燃え上がる奴隷の火など望んでいません。どんなに激しく燃えるか、どんなに必要不可欠なものになってしまうか、わかっています。所有されるのは嫌。男のなすがままにされるのは嫌。地球であの背の低い男が、わたしが自分のベッドに縛り付けられていたときに、腹ばいと懇願を学ぶだろうと断言したことを思い出しました。
「いや!お願いだから。お願い、やめて、やめてちょうだい」
あがこうとしました。ラナの鈴の音、ユートと男たちの歌声と手拍子、ダンスのリズムに皮の盾を叩く音。
大きな顔がわたしの首に覆いかぶさって来ました。わたしは頭を片方に倒し、涙を流しました。 「わたしはホワイト・シルクなのに!」
「差額は払う」
突然、わたしたちの体の回りに、風の音が起こりました。ラナが悲鳴を上げ始めましたが、その声は包み込まれました。ユートも叫びましたが、やはり叫び声は急にかき消えました。衛兵たちは怒りの声を上げながら、立ち上がろうとしました。風が吹きました。闇の中から激しい風が。わたしを押さえつけていた衛兵は半分立ち上がったところで、何か大きくて重いものが側頭部に当たり、悲鳴を上げ地面に倒れました。わたしは急いで立ち上がろうとしましたが、二人の女の体が突っ込んで来ました。別の女がわたしに首を締め付ける紐を留めてねじったので、危うく窒息するところでした。息を吸おうと口を開けると、別の女が詰め物を詰めて来ました。それからさるぐつわをされ、首の締め付けが和らぎました。腹ばいに投げ倒され、縛りの紐で手首を足のほうに引っ張られました。
「もっと火をおこせ」
背が高くブロンドのリーダーの女が言いました。なんて驚くべき女だろう。軽い槍を持ち、毛皮をまとい、腕と首の周りには蛮族風の金の飾り。
他の女たちが火に木をくべました。
辺りを見回しました。
女たちは残りの二人の衛兵の傍らにしゃがみ、縄で縛っていました。
そして立ち上がりました。
わたしは既に縛られさるぐつわをされたラナとユートを見ました。
「男たちを服従させますか?」と女の一人が言いました。
「いいや」 と背の高いブロンドの女が答えました。
さっきの女がユートとラナを示しました。「こいつらは?」
「見ただろう。ここに置いて行け。この女たちはカジュラだ」
心臓がどきどきしました。これは森の娘だ。女豹族(パンサー・ガールズ)とも呼ばれて、北の森で自由奔放に暮らす、無法者の女だ。そうしたければ男を服従させることもある。
彼女たちはわたしがもがいているのを見ているはず!わたしはカジュラじゃない!わたしを仲間に入れたいと思っているに違いない!もう自由になれるのね!なんとかして地球に帰してくれるのかもしれない。とにかく、わたしを自由にしてくれるんだ!わたしは自由になるんだわ!
でもわたしはさるぐつわをされ、手を後ろに縛られ、窒息の紐を首につながれてその紐を女が持ち、地面に立たされています。
わたしは自由ではないようです。
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