2011/04/05

ゴルの虜囚 97 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

8. ローラの北での出来事(15)

売られるが楽しみでたまらない自分に気がつきました。

男に所有されるのはどういう感じかと、好奇心をそそられて不思議に思う自分に気がつきました。ときどき、他の娘が見ていないときに、ご主人様の首輪があるかのごとく、手をのどにやりました。ご主人様のものと示す首輪の文字をなぞる真似をしました。ローラで売られるのに異議を持ちさえしませんでした。荘厳な空気と空、北には森、南には川、シンプルで、ワイルドで、素敵な場所な気がします。川へと降りる倉庫の間を蛇行する坂道、建物に付いた色を塗った木の彫刻、黒い柿板(こけらいた)の屋根、道行くボスクのにおいと荷車がきしる音、魚と塩のにおい、川から来る濡れて光るタルラリオン、波止場の革や毛皮のにおい、のこで引かれた材木。そしてわたし好みの男はラフなマントとチュニックをまとい、生き生きしてしなやかな強い男。大きな手をしていてよく笑い、きれいな空気の中、川で手や背中を使って働く男。もしわたしが、いつか見たように荷車の傍らに乗せられた娘だったら。もしわたしが、いつか聞いたように、夜たいまつをつけて釣りをする人たちと一緒だったら。市場で抜け目なくその人の懐具合と交渉できるかしら。わたしの作る料理を気に入ってくれるかしら。毛皮に包まって、存分にご主人様を喜ばせる努力をするであろう自分に、笑顔になりました。そしてまた微笑みました。そうしなければご主人様はわたしをぶつとわかっているのだから。ご主人様はわたしを連れて旅に出るかしら。時には誰も知らない地を、草原を歩み、わたしは奴隷なのに、わたしの手を引いて。ご主人様とその奴隷娘が、玄関口でキスをしているのをローラで見たことがあります。その奴隷娘の目を見ました。彼女をどんなにうらやんだことか!彼女はご主人様を愛していました。その奴隷娘のために、ご主人様があの娘を売らないと良いと願いました。おかしい。わたしが奴隷娘になってきて、男がわたしを所有するのかもしれないと理解するまで、男の肉体の野蛮な美しさと力強さや、男の力に気付いてはいませんでした。

おもしろいことに、生まれて初めて、自分が女であることが嫌だと思わなくなっていました。それどころかむしろ、あちらが男だということが嬉しくてゾクゾクしました。そんな男と一緒ならば、奴隷であってもゴルで女であるのは喜ばしいことです。囚われの娘に過ぎなくても、アルの王座のためにだって性別を変えるつもりはありません。

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