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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
6. 奴隷商ターゴとの邂逅(13)
ターゴが大声で命令を下しながら、気遣わしげに見回しています。
部下の一人が掛け声を上げました。
娘たちが引き革につながれて、前かがみに荷車を引きました。
男たちのうち二人が、後輪を押しました。
荷車が動き出しました。
革のバンドから身を傾けて、進んでいるふりをしました。
この人たちが荷車を引くのに、わたしは必要ありません。前にも引いていたのですから。精一杯やっているかのように、草に足を突っ込みました。効果を上げるために、少しうっとうめいたりしました。
ユートは嫌な感じの、疑いの目をわたしに投げかけました。ユートの小さな体は、紐に引っ張られていました。
かまうもんですか。
わたしは鞭で打たれ、痛みと屈辱に叫び声を上げました。
ユートが笑っています。
全体重を皮ひもにかけ、うめきながらありったけの力で進みました。
荷車は動いています。
1、2分すると、わたしがされたように、ラナが腰のくびれたところの下を鞭打たれ、屈辱と痛みに悲鳴を上げ、刺されたような赤い筋がひとつ残りました。他の娘たちが、わたしも一緒になって笑いました。ラナは人気がないんだなと思いました。ぶたれて良い気味だわ!あいつは怠け者よ!何でわたしたちがラナの分まで引っ張らなきゃならないの?わたしたちより優れてるとでも?
「ハル=タ!」ターゴが大声で言いました。「ハル=タ!」
「ハル=タ!」周りにいる男たちがどなりました。
娘たちがいっそう精を出して引っ張り始めると、荷車のスピードが上がりました。時々男たちも車を押しました。
二人の男が片側ずつに付き、わたしたちを鞭打って叱咤したので、わたしたちは痛みに悲鳴を上げました。
これ以上できないくらい一生懸命引いているのに、ぶたれるのです!あえて抗議しませんでした。
荷車は草深い野原をゴトゴトと進みました。
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訳者の言い訳と解説
反地球シリーズを1巻からお読みの方はご存知のとおり、
「ハル=タ」はゴル語で「早く」、です。
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