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<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
6. 奴隷商ターゴとの邂逅(12)
手首を掴んでいた二人の男たちが、わたしを後ろからぐいと掴みました。わたしはターゴが退く後ろ姿を見つめていました。ターゴに向かって叫ぶ勇気はありません。もはや彼はわたしに興味を失っていました。二人の男はわたしを荷車の轅(ながえ)に引きずっていきました。
片方に10人、もう片方に9人いました。
わたしをぶった娘、ラナが前の位置にいました。にわかに、ラナに引き具が付けられていることに気付きました。留め金のついた革のバンドを手首にはめられ、持ち場につながれています。体には左肩から右の腰に、ずっしりとした革の幅広い輪がかけられ、荷車の轅にボルトで締められていました。他の娘たちも同じようにつながれていました。留め金のついた革バンドがわたしの手首にはめられ、肩から体に重々しい革の輪を通されました。
わたしはすすり泣き、かろうじて立っていられるようでした。足ががくがくします。背中全体がひどくズキズキします。涙の味がしました。
男がわたしの体のバンドを調節し始めました。
近くの向かいにいた、背が低く、黒髪で真っ赤な唇の、薄墨色の目をした娘が微笑みかけてきました。
「ユート」
彼女は自分を指差しながら言い、今度はわたしを指差して尋ねました。
「ラ?」
荷車につながれた娘たちを見ると、左の太ももにわたしのと同じ印がついています。
絶望を感じました。もし誰かがわたしたちを見たら、わたしが他の娘と何の違いもないと、あの人たちと同じだと思うじゃないの!
手首のバンドを引っ張りましたが、厳重に固定されていました。
「ユート」
背の低い、黒い瞳の娘が自分を指差して繰り返し尋ねました。
「ラ?」
男が体のバンドを締めると、ぴったりと収まって、立ち去って行きました。わたしは引き具を付けられたのです。
「ラ?」
黒い瞳の娘が縛られた手でわたしを指差し、しつこく繰り返しました。
「ラ?」
「エリノア」と小さな声で言いました。
「エ=リ=ノア」
ユートは微笑んで繰り返してから、他の娘に向かい、わたしを指差しました。
「エ=リ=ノア」
彼女は嬉しそうに言いました。満足げでした。
どういう訳か、この背の低い愛らしい娘がわたしの名前を喜んだことに、すっかり感謝していました。
ほとんどの娘が、大した興味もなく振り返ってこちらを見ました。わたしをぶったラナは振り返りもしません。
わたしの左側の二人前の、背が高くてブロンドがかった髪の娘が微笑み、
「インジ」と自分を指して言いました。
わたしは微笑みました。
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