<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
8. ローラの北での出来事(10)
スキャーンのホーコンの収容所の向こうに、タルンの囲い地がありました。そこでは足を留められた巨大な鳥が羽をばたつかせ、のけぞって雄たけびを上げ、投げられたボスクの大きな肉片を引きちぎっていました。時には足かせを引きちぎり、大きな黄色っぽい偃月刀(えんげつとう)のようなくちばしで留め具を突いたりしています。叩きつけるタルンの羽で吹き付ける風は、ちりや小石を巻き上げ、人間をも足元から投げ飛ばします。 大きなくちばしが引き裂き、かぎづめが押さえつけ切り裂き、餌のボスクのように大きなものも簡単に真っ二つにするほどです。タルンの囲い地があって、ホーコンの収容所の壁が遠くにあって、わたしたちのと共有の壁があって、わたしは三方の柵の壁に隔てられていてさえ、あの鳥が恐ろしいと思いました。ホーコンの北の美女たちも収容所のすみにすくんでいて、良い気味だと思いました。たまに大きな鳥が雄たけびを上げると、何人か叫んで走ってわたしたちの柵の方に集まったり、丸太作りの宿舎に飛び込んだりしました。どうして女はそれほどひどくタルンを怖がるのか知りませんが、わたしたちはそうなのです。でもほとんどの男だってそうです。タルンに近づける男はまれです。タルンはタルンに乗れる者とそうではない者を知っていて、そうでない者が近寄れば、タルンはばらばらに切り裂いてしまう、と言われています。この野獣に近づける男がほとんどいないのに不思議はありません。タルン飼育者は見ましたが、スキャーンのホーコン以外に、タルン戦士を見たことがありませんでした。彼らは戦士階級の野生的な男たちです。ローラの酒場で飲んだくれ、喧嘩とギャンブルに明け暮れています。奴隷娘たちは目を輝かせ興奮して周りに押し寄せ、気付いてほしい、奥の小部屋に来いと命じて欲しいとせがむのです。一部の男、戦士でさえもが、尊大で堂々としたタルン戦士を疎ましく思い、うらやむのも不思議はありません。ある夜はリッチで、次の日にはすっからかん。いつも危険と隣りあわせで、戦いと享楽。歩みにも、わきに挿した剣にも、目つきにも、プライドと男らしさを帯びています。
でもホーコンはタルン戦士で、わたしは怖かったです。ホーコンは醜く、油断のならない男に見えました。
ターゴはホーコンとの取引きに神経を尖らせているようでした。
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訳者の言い訳と解説
タルンはタルン戦士を見分けるんだよってところ、毎回同じ記述が出てきて、
お決まりの訳し方になっていたような記憶があるのですが、
手元に資料がないので後日修正します。
ゴルの酒場には、酒場奴隷(paga slave)という奴隷娘がいることがあり、
酒場の奥の小部屋で奴隷を抱くことができます。