<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン
9. 小屋(2)
ナイフの刃が頬とさるぐつわの間を通り、さるぐつわが切り離された。気が遠くなりそうだ。舌を使って、口の中から分厚くずっしりと丸められた詰め物を出そうとした。誰も助けてくれなかったが、うまくいった。口から出た、不恰好で巨大で重たく、湿ってすっぱい詰め物が、わたしの前の草の上にあった。今にも吐きそうだ。
わたしは非難する目で見回した。単なる奴隷にさるぐつわをするようなことを、このわたしにするなんて!
ヴェルナのナイフはまた鞘に収まっていた。
ヴェルナが見えたとき、できるだけ対等な立場で言った。「お腹が空いた。咽も渇いた」
「お前のご主人様が食べさせただろう」
「そうとも、餌を与えられていた!」 と女の一人が大声を上げた。「手から食べさせられていたぞ、けものみたいに!」 女は軽蔑をこめて馬鹿笑いした。「縛られて、肉を口で受けようと飛び跳ねてさえいたじゃないか」
「男どもはさぞかし楽しんだことだろう」とヴェルナが言った。
「わたしは奴隷娘じゃないんです」
「男の焼印を押されているじゃないか」
わたしは顔が赤くなった。その通り。わたしには男の焼印が押されている。
「カ=ラ=ナ酒まで持っていたくせに」 と女の一人がせせら笑った。
「運が良い奴隷だな」 とヴェルナが言った。
わたしは何も言わずに、怒り狂っていた。
「時間がないときは、カ=ラ=ナ酒でどんな女も奴隷にできると言うが」 ヴェルナがわたしを見つめた。「それは本当か?」
何も言えなかった。わたしは恥じて思い出していた。
火のそばで、自分がどんな風だったかを。
衛兵の手は縛りのひもの中に置かれ、
どんどん自分が男の心を奪う奴隷娘になっていたことを。
どんな風にひざまずいて、
キスをしようとして、
衛兵の顔に髪が落ちかかったかを。
わたしが挑発したけれど、その後で喧嘩をしていた。
「わたしは抵抗していたんです!」 と言うと、女たちは笑った。
「助けてくれてありがとう」
女たちが笑う。
「わたしは奴隷じゃありません」
「おまえはカミスクを着ていた。娘の籠に入れられていたし、奴隷らしく給仕もしていた!」 と女の一人が言った。
「男に触ってもらいたがっていた!」 と別の女が叫ぶ。
「われわれは奴隷娘の体の動きを知っているんだ」 と更に別の女が言った。「そしてお前の体は正直だったぞ!お前は奴隷だ!」
「男のものになりたいんだろう!」 とヴェルナが怒鳴った。
「違います、そんなことありません!」 わたしは涙を流した。「わたしは奴隷じゃありません、わたしは違う!」
女たちもわたしも、黙っていた。
「わたしがもがいていたのを見たでしょ」 わたしはやけになり、小さな声で言った。
「かわいらしかったぞ」 とヴェルナ。
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