2010/07/04

ゴルの虜囚 74 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(10)

  食事の後、体を洗うため小川の近くに連れて行かれました。水に入るのは気が進みませんでしたが、ターゴの鶴の一声に、震えて歯をガチガチ鳴らしながら、流れの速い冷たい小川に体を沈めました。しばらくすると水に慣れ、そのうち離れがたくなりました。みんなに倣って髪を洗い、体も洗いました。驚いたことに、女の子たちが水を掛け合って遊び始めました。みんな笑っていました。誰もわたしのことを気に留めません。衛兵の目が光っているのはみんなと同じなのに。孤独でした。ユートに近づくと、そっぽを向かれてしまいました。ユートはわたしが引き具を引くのを怠けようとしたことを、忘れていませんでした。水から出るのを許されて、草の上に座りました。ひざを抱えて、一人ぼっちで。
  川岸でターゴがにこやかに微笑んでいました。ターゴは奴隷娘たちが嬉しそうにしているのを見るのが好きです。幸せそうな女の子は売りやすいからだと思います。衛兵も同じで、機嫌が良いようです。衛兵たちが歓声を上げる奴隷娘に何事か大声で呼びかけると、娘たちも笑いながら返して衛兵を笑わせ、ひざを叩いて笑っていました。奴隷娘の一人が片目で白髪頭の衛兵に水をはねかけると、その衛兵は水に飛び込みました。笑い声が大きくなり、水をかけた娘を水に突っ込みました。その娘が水を飛ばしながら浮かび上がると、衛兵も服がびしょぬれで、身震いしながら小川から上がったので、わたしまで笑いました。それから女たちは水から呼び戻され、髪を乾かしました。輪になってひざまずき、笑ったりおしゃべりしたりしていました。
  誰もわたしのことを気に留めません。忘れられていました。
  片目で白髪頭の衛兵が岸に上がり、乾いた服をまとうと、奴隷娘たちは歓声を上げておねだりしました。衛兵は輪の中に飛び込み、必要とあらば身振りを交えて話をして楽しませていました。きっと笑いを誘う話だったのでしょう。きゃあきゃあと歓声が上がっていました。その衛兵が手を振り飛び跳ね、最初は怖がっている顔をしてから、槍で荒っぽく一突きするようにした後、勝利に酔った顔をするのを見て、わたしまで笑いました。
  女たちは大笑いして、右の手のひらで左の肩を叩きました。その衛兵はうやうやしくお辞儀をして、輪を離れました。女たちは喜んで肩を叩き続けました。衛兵は堂々と首を揺らしましたが、輪にまた入りはしませんでした。ラナがこちらをちらりと見ました。それから輪の中にさっと立ち、ターゴに向かって大声を出し、それはもう、かわいらしく両手を伸ばしました。ターゴが微笑み、部下に何か言いました。腹立たしいことに、わたしが取り上げられた洋服が輪の中に持ってこられました。
  ラナは服を難なく身に着けました。
  わたしの服を着ているラナはなんてきれいなの!わたしより着こなしているじゃない!
  歓声を上げる二人の奴隷娘が、渋るターゴを輪の真ん中に引っ張って来ました。するとラナは、横柄な態度でターゴをなじり始めました。ラナのパフォーマンスに、わたしは関心がありません。奴隷娘たちは無礼講を楽しんでいたようですけれど。ラナはターゴの周りを歩きまわり、叫び声をあげたりジェスチャーをしたりしました。それから他の娘たちを笑ってあざけるように話しかけました。ラナの声は高慢で、傲慢で、冷淡で、面白がって、堂々として、女帝のようでした。全員を足の下の埃より劣っているかのように扱いました。顔を上げ、鼻を突き出し、うんざりしたように顔を片方に向けました。そして体全体をかすかに動かし、特に右手を、我慢しきれずにいらいらしているが、こらえようとしているといった動きにしていました。娘たちは甲高い笑い声を上げました。ラナはすばらしく物まねが上手でした。ものすごく腹が立ちました。
  それからターゴを輪の中に引っ張ってきた二人の娘がラナにおどりかかり、服を脱がせてターゴの前の草の上に服を放りました。別の娘が立ち上がり、ラナが痛そうにしてのたうちまわり、身もだえしてわめく間、ぶつ真似をしました。そして解放されると、ターゴに向かってすばやくはいつくばって行き、震えながらターゴの足に首を伸ばし、脚を見つめてサンダルに何度も何度もキスをし始めました。
  娘たちは面白がって大笑いしました。
  何人かはわたしの反応を見ようとしました。わたしは目を背けました。
  ターゴは二度手を叩き、さらにもう一回叩くと、ご主人様と奴隷に戻りました。

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訳者の言い訳と解説

  特に後半が雑だな…。いずれ修正する。
でも今回は話にやっと動きが出てきて、面白くなってきたのではないかと思う。

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ゴルの虜囚 73 【CAPTIVE OF GOR】

<反地球シリーズ>
ゴルの虜囚
ジョン・ノーマン

7. 他の女たちと、北方へ連れて行かれる(9)


 わたしたちの生活は、ターゴが隊商に出会った後ぐっと楽になりました。
 ターゴの買った二台の荷車は商人用です。後輪が前輪より大きく、一台を二頭のボスクが引きます。
ボスクは大きな茶色の生き物で、幅広い磨き上げられた角にはビーズがかけてありました。ひづめも光沢があり、長い毛むくじゃらの毛皮は毛づくろいされてつやがありました。
荷車の一台には足かせを止める横木がありました。もう一台には、草原で燃やして捨てたターゴの壊れたワゴンから取り付けました。
通常、女たちの十人は荷車に乗り、五人は脇でした。ラナは最初の、わたしのは二番目の荷車に乗りました。どちらの荷車にも九人ずつ女がつながれています。
ターゴは奴隷を二人売ってしまっていました。わたしたちは短い鎖につながった足かせをはめられていました。奴隷の片方の足首に足かせをはめ、鎖を横木に通してからもう片方の足首に次の足かせをはめて固定します。
どうでも良いと思いました。私たちが荷車の中でカミスクを許されていないことだって、気にかけさえしませんでした。荷車の磨かれた床に敷かれた幌布の上に横たわると、がたがたゆれ続けているにもかかわらず、たちまち眠りに落ちました。荷車を引く引き具と重労働からの解放は、それだけでこの上ない喜びでした。
 何時間も後に目が覚めたとき、体中の筋肉がこわばって痛みました。
 わたしたちは荷車から出され、外に鎖でつながれてひざまずき、食事を与えられました。隊商に出会う前の、わたしが捕獲されてから二日は、ベリーと水、衛兵が調理して投げ与えてよこす小さな猟鳥のかけらしか食べていませんでした。今では、鎖につながれて輪になってひざまずき、熱いスープの椀を回し飲み、それからそれぞれに黄色いパン一斤の六分の一を与えられ、手ずから食べました。そしてわたしたちの前の草の上に、衛兵は調理した大きな肉の塊を放りました。わたしはお腹が空いて死にそうだったから、指をやけどしながらそれを掴み、歯と手で引きちぎり半分を口の中に放り込むと、口の端を肉汁がしたたり落ちました。草の上に跪き、投げてよこされた肉を口で引き裂き、我を忘れて髪を振り乱し、肉汁を体にたらしている裸のゴルの奴隷娘が、洗練された趣味の良いエリノア・ブリントンとわかる友達は、いないだろうと思いました。単なる生焼けのローストしたボスクでしたが、むさぼるように食べました。奴隷商人の荷車の脇で、ゴルの草原の地面から掴み取った、熱く湯気を立て肉汁のあふれる生焼けのボスクの肉は、パリのレストランで味わったソースのかかったフィレ・ミニヨンに比べると、上品な味ではありません。



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